[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2017年12月号 278号

(2017/11/15)

ユニゾン・キャピタルと組んで「地域ヘルスケア連携基盤」を設立

包括的ヘルスケアのプラットフォーム構築を目指す武藤真祐会長

  • A,B,EXコース

武藤 真祐(むとう・しんすけ)

第1段階は調剤薬局のグループ化

  PEファンドと医師が協働して、病院、介護、看護、薬局の垣根を越えた連携を実現し、地域の包括的なヘルスケアのプラットフォームを構築しようというユニークな動きが注目されている。

   PEファンドのユニゾン・キャピタル(以下ユニゾン)が運営するユニゾン・キャピタル4号投資事業有限責任組合及びUnison Capital Partners IV(F), L.P.(4号ファンド)の出資で2017年5月に設立された「地域ヘルスケア連携基盤」(CHCP)がそれだ。

  現在、日本の医療・介護費は約50兆円に上り、日本のGDPの10%の規模に達しており、今後も高齢化の進展に伴い増加が見込まれている。このため社会保障費の抑制はわが国喫緊の課題となっている。これに伴って医療・介護領域では、効率的かつ質の高いサービスを提供するための体制整備が強く求められている。一方で、中小規模の事業体が多い医療・介護業界では、後継者や人材の不足が一層深刻な問題となっている。こうした状況を打開するための一石を投じたいという理念のもとに設立されたのがCHCPである。

  ユニゾンはこれまでにドラッグイレブン(現・JR九州ドラッグイレブン)、昭和薬品化工、参天製薬の抗リウマチ薬事業の買収のほか、日本長期収載品機構を設立して子会社のLTLファーマを通じてアステラス製薬から長期収載品16品目を譲り受けるなど、ヘルスケア分野における投資、知見を積み重ねてきた。CHCPは、そうした実績を活かして設立されたもので、みずほ銀行、福岡銀行、三井不動産のほか、ベンチャー投資や大企業との新規事業のインキュベーション、スピンアウト、ジョイント・ベンチャーにも取り組んでいるWiL LLC.等の企業の協力を得ながら、ヘルスケア事業者の経営支援にあたる。

  第1段階は、地域に根差して運営されてきた中小規模の調剤薬局のグループ化に注力し、調剤薬局を政府の推進する地域包括ケアの担い手として発展させることによって、CHCPの事業拡大に取り組むとしており、すでに第1号案件として、17年9月にCHCPの子会社であるCHCPファーマシーを通じて群馬県を中心に12店舗を展開する調剤薬局チェーン、有限会社ケイ・アイ・ティーを買収した。

医療分野のイノベーター、武藤真祐氏

  このCHCPプロジェクトの中心的存在ともいえる人物が武藤真祐会長である。同氏は、1996年に東京大学医学部を卒業。その後、三井記念病院循環器内科医、宮内庁侍従職侍医を歴任して05年、マッキンゼー・アンド・カンパニーで経営コンサルタントとして勤務し、10年には在宅療養支援診療所として「祐ホームクリニック」(11年に法人化、医療法人社団鉄祐会)を設立。さらに11年、在宅医療を基点とした高齢者の包括的な生活支援のプラットフォームの構築に取り組む一般社団法人「高齢先進国モデル構想会議」を設立。同年9月には東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市にも在宅療養支援診療所を開設。石巻市で支援団体「石巻医療圏健康・生活復興協議会」を立ち上げ、さらに15年には、シンガポールで「Tetsuyu Home Care」を設立している。

  祐ホームクリニックと高齢先進国モデル構想会議は、被災地における健康・生活への復興に対する取り組みから、13年厚生労働省第1回「健康寿命をのばそう! アワード」において、厚生労働大臣優秀賞(団体部門)を受賞。15年には医療分野におけるイノベーターに贈られる「イノベーター・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれている。

  武藤氏は現在、厚生労働省情報政策参与、日本医療政策機構の理事を務め、内閣総理大臣を議長とする「未来投資会議」でICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用した次世代医療のあり方を提言するなど、地域の包括的なヘルスケアに関して多方面で活躍している。

  この武藤氏と、ユニゾンの松田清人パートナーにCHCP設立の経緯と、今後の事業構想について聞いた。

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