[視点]
2018年1月号 279号
(2017/12/15)
企業買収にもインバウンドの波到来
ここ数年で、日本に対する海外からの関心が高まってきています。訪日観光客は2017年9月末までに約2120万人となり、昨年同時期比較で18%増、また同時期の日本人出国数1340万人を大幅に上回りました(日本政府観光局)。日本の製品、技術、コンテンツというアウトプットから、日本という国そのものに興味がシフトしているように見えます。
一方、資本のインバウンドである「対日直接投資」はどうでしょうか。日本の対内直接投資残高は約18兆円でGDPの3.8%。これは、世界199カ国中196位で、日本の対外直接投資残高の6分の1にも達していません(UNCTAD、JETRO)。日本に魅力を感じている人がいるものの、実際にお金が流れてきていないのが見て取れます。安倍首相は2015年「新三本の矢」経済政策発表の場で、「大きな経済圏を世界に広げながら、投資や人材を日本へ呼び込む」と発言しました。
この停滞傾向も、この3年ほどで潮目が変わりつつあるようです。これまで、海外企業がなかなか買収することができなかった大手企業(または事業部門)の売却合意が成立しています。2016年には鴻海がシャープ、美的集団が東芝の白物家電部門、KKRがカルソニックカンセイ、2017年に入ってからは、KKRが日立国際と日立工機、KSSがタカタ、ベインキャピタルが東芝メモリとADKという具合です。レコフM&Aデータベースによると、2017年の対日インバウンドM&A金額(対日直接投資額から設備投資等のグリーンフィールド投資を除いた額)は9月末現在でリーマンショック前の2007年通年のレベルを越えています。
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