1. はじめに
「M&Aでみる日本の産業地図」第125回(2015年7月号)において、出版業界の長期にわたる市場縮小がドライバーとなり、M&Aによる異業種参入や投資ファンドによる業界再編が進んでいることを述べた。前稿から約3年経過したが、本稿ではそのアップデートという位置付けで、直近のM&Aデータから出版業界の最近の動向を読み解く。
2. 直近のM&A件数及び出版社の状況
前稿では、
レコフM&Aデータベースで集計した出版・印刷業のM&A件数は、年間20件程度の水準が2014年以降に40件以上となっていた(表1)。2015年以降もこの水準は変わっていない。2017年は特にM&A件数が多く、過去最高の67件を記録している(注1)。2018年のM&A件数は7カ月経過時点で21件となっており、年末にかけて案件が増加することを考慮すれば、40件以上になっても不思議ではない状況だ。
出版業は中小企業が多く、メディアに公表されていないM&Aや廃業が少なくないと想定される。出版ニュース社が集計している出版社数は、直近の2017年は3382社(注2)であるが、その数は2010年からの過去7年間で約430社も減少している。出版社の7割以上は従業員数50名以下の中小規模の企業・組織であり、出版市場の縮小や後継者問題、デジタル化やEC取引の浸透といった構造変化に直面し、苦境に立たされていることが想定される。
前稿に記載した出版社の倒産の状況は