[視点]
2018年4月号 282号
(2018/03/15)
M&Aでは企業の支配権(Control)が争われる。敵対的買収では、最も高い買収価格を提示した買い手が選ばれるのが一般的である。現経営陣よりも高い株主価値を実現できると考えられる買い手が現れれば、その買い手に支配権を委ねることも含めて検討し、株主価値を最大化することが経営者(取締役・執行役)(注1)の責務であるとされる。
株主の利益を重視するこの考え方は、国内外の投資家や経営者のみならず、法曹界、市場関係者、規制当局、研究者に広く受け入れられている。だが、この考え方が広まったのは1970年代以降のことである。
コーポレートガバナンスに関して初めて問題提起したのは、1932年のA. Berle及びG. Meansの『近代株式会社と私有財産』である。1929年の米国大企業200社で、法的支配(株主による支配)とは異なり、経営者が支配している実態を指摘した。株式会社が大きく複雑になり、株主の数も増えるにつれ、新たに出現した専門経営者に経営を任せるケースが増えたのが背景である。会社は株主の利益ばかりでなく、従業員、顧客、社会の利益に配慮しながら経営すべきであるとされた(注2)。こうして経営者支配の時代が続いたが、70年代に入り、二つの論文が流れを変えたのである。
1970年、経済学者M. Friedman(フリードマン)はニューヨーク・タイムズ・マガジンに寄稿した論文で、
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