[対談・座談会]

2018年4月号 282号

(2018/03/15)

[座談会] 海外M&Aに伴う不正リスクの予防と対応の実際

【出席者】(五十音順)
 石田 雅彦(DLA Piper東京パートナーシップ 外国法共同事業法律事務所 コーポレート部門代表パートナー 弁護士)
 片山 浩樹(クロール アソシエイト・マネージング・ディレクター)
 栗原 浩夫(Advanced Business Directions 代表取締役)
 村崎 直子(クロール マネージング・ディレクター 日本代表)(司会)
  • A,B,EXコース

左から村崎 直子氏、片山 浩樹氏、栗原 浩夫氏、石田 雅彦氏

<目次>

自己紹介

村崎 「日本企業による海外M&Aが増加を続けています。それに伴って、M&Aを成功に導くために様々なリスクの予防と発覚したリスクへの対応が不可欠になっています。そこで、海外M&Aのリスク対応のエキスパートの皆様に、M&AのプレからPMIの各プロセスに見られるリスクと、その予防、対応の実際を話し合っていただきます。まず自己紹介からお願いします」

石田 「弁護士の石田です。現在はDLA Piperという外資系法律事務所のコーポレート部門にてパートナーをつとめております。最近私個人として特に増えている業務は、日本企業のM&A、海外進出、CVCをはじめとした海外へのベンチャー投資に関するアドバイスです。最近のディールの特徴として、当初はアメリカに関連するM&Aなので日本の弁護士とアメリカの弁護士を中心に仕事をしてきましたが、デューデリジェンス(DD)を進めていくと当初はあまり考えていなかった国の競争法や労務等、場合によっては証券法等、多くの国の法律が関係することが判明し、それに対してスピーディーに対応しなければならない、という種類の案件が増えてきました。そのため、私のような日本人弁護士が、海外80以上のオフィスにて担当する現地の弁護士を率いて、日本企業のM&Aあるいは海外への投資を行う、という種類の案件が増えてきております」

片山 「クロールインターナショナル日本支社の片山と申します。弊社は、一言で言いますと、リスクマネジメントを専門とする米系のコンサルティング会社です。今回のテーマのM&Aの関連では、リスクDD、あるいはインテグリティDD(公開および非公開情報に基づいた、企業や個人の素性、資本関係、実績、評判、倫理観に係る情報収集や分析)と呼んだりしますが、要は相手先企業が誠実かどうかに関して定量的に測れない部分、定性的な評価を中心に調査をやっております。具体的には相手先企業が政府高官とか軍と癒着して贈収賄とか、そもそも対象先買収企業の創業者が裏社会とつながっているとか、サンクション(制裁)リストに載っているとか、犯罪歴があるというようなディールを進める上で障害となる要因を中心に調査しております。

  私自身は、大手都市銀行に入行後、4大会計事務所の1つでシニア・マネージャーとして、バリュエーション、DD、内部管理態勢の強化を中心とした全社的なリスク管理コンサルティングを手がけ、現在当社でビジネスDD、戦略的組織再編等をはじめとする案件に従事しています」

栗原 「アドバンスドビジネスダイレクションの栗原です、よろしくお願いいたします。私も大手都市銀行に入社しまして、銀行時代は主にコーポレートファイナンスならびにM&A業務、事業再生案件に従事しました。その後、朝日アーサーアンダーセン(現 プライスウォーターハウスクーパース)に転じて、大手総合商社の財務再建や経営管理制度構築を支援、並びに企業ポートフォリオマネジメントや多くのM&A取引をはじめ企業価値評価ならびに事業再生業務に従事した後、2005年当社を創業してM&Aフィナンシャルアドバイザリー、事業価値評価ならびに事業再生や成長戦略支援などの業務を行っております」

村崎 「司会を務めさせていただきます村崎です。私は片山と同じクロールにおります。大学を卒業後、警察庁に入り、静岡県警捜査第二課長、兵庫県警外事課長を務めました。この間、外務省出向時には拉致問題を始めとする北朝鮮外交に従事。その後、08年ベイン・アンド・カンパニー・ジャパンを経て10年クロール日本支社に入社し、15年から日本代表を務めさせていただいております」

プレディール段階でのトラブルを防ぐために

村崎 「DDをスタートさせる前の段階で起こるトラブルとそれを防ぐためのアドバイスからうかがっていきたいと思いますが、まず私の方から、プレディールの段階で企業の担当者の皆さんにアドバイスできることとして、非財務リスクのチェックをどのように行うかという点についてお話させていただいたうえで、ご出席の皆さんが経験されたトラブルとそれに対するアドバイスについてうかがっていきたいと思います。

  DDを行う過程で、買収以前から存在しているリスクで、隠れているリスクを含めて100%明らかにすることは不可能に近いのですが、例えば、すでに現地では汚職の常習犯として有名であり、摘発もされているような会社のような場合、買収後汚職が表面化した時に買い手として知らなかったでは済まされないということもありますので、事前にわかる範囲で対象企業のビジネスプラクティスであるとか、汚職の経歴、政治家との関係で癒着している噂がないのかなどを把握しておく必要があります。

  最近ではそういった不祥事やコンプライアンス上の問題だけではなく、労組との関係がうまくいっていないために、後々大きな問題に発展したりしますので、そういった労務関係の問題の有無を事前に把握しておきたいという企業担当者も増えてきていると思います。

  そこで、企業の担当者の方にもできる非財務リスク情報の収集方法についてお話いたします」

非財務リスク情報の収集方法

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