1. 最近の日本のM&Aアクティビズムの動き
「公正なM&Aの在り方に関する研究会」の指針
-- 上場企業のM&Aに対して、
アクティビストが介入するケースが増えています。直近では、村上世彰氏が関係する南青山不動産が、廣済堂の
MBOによる非上場化に対し、対抗
TOBを実施したことが注目を集めました。最近の日本のM&Aアクティビズムの動きについて教えてください。
「昨年11月に経済産業省により『公正なM&Aの在り方に関する研究会』が立ち上げられました。2007年に策定した『企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」について、策定後の環境変化等を踏まえ、本指針の見直しの要否を含めて、我が国の公正なM&Aの在り方について検討を行う、というものですが、今回、『MBO』ではなく、『公正なM&A』に変わっているのは、利益相反構造のあるM&Aも対象範囲にするということです。具体的に言うと、親子上場の解消というか、上場会社による上場子会社の完全子会社化なども含めた指針になっているということで、まさにこれはM&Aアクティビズムも念頭に入れた指針ということだと思います。指針案が公表されていますが、その中で特に独立した特別委員会の設置や、特別委員会のアドバイザーの起用、つまり、会社の取締役会とは別のアドバイザーを特別委員会に起用するということが盛り込まれています。上場子会社の取締役は、少数株主の利益保護に責任を持たなければならないのが原則で、特別委員会はそれを担保する措置と位置付けられています。今後はこの新たな指針に沿って実務が進められるようになると思われます」
廣済堂のMBOを阻止した村上ファンドの対抗TOB
「事例では、先ほどおっしゃったベインキャピタルによる廣済堂のMBOが村上ファンドによって阻止されたことが新しいですね。ベインキャピタルによるTOB開始前の株価は400円台、BPS(一株当たり純資産)で1114円のところを、最初の買付価格が610円ということで、それだけ見てもちょっと安い。村上さんはそこに目を付けて、TOBが公表されてから市場で買い集め、さらには対抗TOBまでかけました。結果、株価がTOB価格を大幅に上回り、ベインキャピタルによるTOBは22%程度しか集まらずに失敗に終わっています。ここからの教訓ですが、今後は…