[視点]

2019年3月号 293号

(2019/02/15)

株式は商品か ―忘れられた株主の直接監視―

文堂 弘之(常磐大学 総合政策学部 経営学科 教授)
  • A,B,EXコース
1.株式は金融商品になった

 今から13年前の2006年に証券取引法が改正された。内容以上に大きな改正点は、名称が「金融商品取引法」(以下、金商法)に変更されたことである。それまで規制対象ではなかった様々な投資性のある金融商品を幅広く横断的に規制対象とすることが改正の1つの狙いである。具体的には、信託受益権、集団投資スキーム持分、様々なデリバティブ取引が規制対象となったことに加えて、直接の規制対象ではないが、投資性のある預金商品・保険商品、不動産ファンド等も金商法と同等の販売・勧誘ルールが適用されることになった。
 このように、従来の「証券」概念から連想されないものも規制対象となったことから、「証券」をやめて「金融商品」を前面に出した名称に変更された。もちろん、「証券」がなくなったわけではない。金商法の第1条には「有価証券の発行」「有価証券の流通」という文言が登場するし、規制対象を定める第2条の第1項「有価証券」の中に「株券」があり、実質内容としての変化はあまりない。しかし結局、それらを含めた規制対象すべてを「金融商品」として事実上位置づけていることは確かである。


2.株式の購入者は消費者?

 さらに、金融庁ウェブサイトを見ると、この改正が目指すものの1つとして、「利用者保護ルールの徹底と利用者利便の向上」が挙げられている。つまり、金融商品を購入する人は、「利用者」だという位置づけである。投資性のある金融商品を購入するのだから、本来は「投資者」と位置付けるべきだが、あえて「利用者」としている。その背景には、金融商品の購入者は、投資者というよりも「商品を購入する消費者」に近いという考えがあるような印象を受ける。このように、金商法では、株式といえども金融商品の1つであり、政府は株式を購入するものを利用者(イメージとしては「消費者」に近い)と位置づけている。
 この背景には「貯蓄から投資へ」の当時からの政府方針がある。たしかに消費者と同様のイメージを強調することは、国民を投資に向かわせる際の入口のハードルを下げるという点で意味があるのかもしれない。
 しかし、こと株式については、

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事

スキルアップ講座 M&A用語 マールオンライン コンテンツ一覧 MARR Online 活用ガイド

アクセスランキング