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[M&A戦略と法務]

2019年8月号 298号

(2019/07/16)

社会福祉法人のM&A手法の整理

鈴木 貴之(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)
第1 はじめに

 現在、我が国は国民の4人に1人が65歳以上という超高齢化社会を迎えているが、2040年には3人に1人が、2060年には2.6人に1人が65歳以上になると推計されており(注1)、介護サービスに対する需要の急増が見込まれている。

 また、2018年4月1日時点の待機児童数は19,895人となっており(注2)、女性の社会進出の進展に伴って顕在化した待機児童問題は未だに解決していないことから、保育サービスに対する需要は引き続き高い水準を維持すると思われる。

 さらに、障害福祉サービスを利用する障害者数は、2008年2月の時点で45.0万人であったが、10年後の2018年2月には82.5万人まで急増しており(注3)、今後も障害福祉サービスに対する需要の増加が見込まれている。

 かかる外部環境を踏まえ、社会福祉法人には、介護や保育、障害福祉といった社会福祉サービスを、量的に十分供給するとともに、質的に向上させることが強く求められている。

 このような課題を克服するために、社会福祉法人は、経営の効率化や経営基盤の強化を進めているが、経営の効率化や経営基盤の強化を達成するための1つの選択肢として社会福祉法人のM&Aが行われている。

 もっとも、社会福祉法人は、公益性の高い非営利法人であり、適正な運営を確保するため所轄庁の厳格な監督に服することが必要とされているため、社会福祉法人のM&A手法は、営利法人である株式会社のM&A手法と大きく異なっている。

 今後、超高齢化社会や女性の社会進出がさらに進んでいくに従って、ますます社会福祉サービスに対する需要が高まり、社会福祉法人のM&A件数も増えていくと思われることから、本稿では、社会福祉法人のM&A手法として、「経営権の承継」、「合併」及び「事業譲渡」の各手法の概要を整理する。


第2 経営権の承継

1 概要

 社会福祉法人には、株式や持分といった概念が存在しないため、株式や持分といったものを譲渡することによって社会福祉法人の経営権を第三者に承継することはできない。

 もっとも、社会福祉法人は、次の図のように、
(i) 評議員、
(ii) 評議員によって構成される評議員会、
(iii) 理事、
(iv) 理事によって構成される理事会、
(v) 監事
(vi) 会計監査人、
によって運営することになっているため(注4)、社会福祉法人の業務執行を行う「理事長」や業務執行の決定を行う「理事」、理事の選任・解任を行う「評議員」を交代することにより、社会福祉法人の経営を事実上、第三者に承継することができる。

図


2 具体的な手続

(1)評議員の交代

 評議員会は、評議員全員によって構成され、社会福祉法人の運営に係る重要事項を議決する機関であり、社会福祉法に規定する事項及び定款で定めた事項を決議できるとされている。

 そのため、社会福祉法人の経営権を第三者に承継する前提として、評議員を交代して評議員会を支配できるようにする必要があり、社会福祉法人の評議員から辞任届の提出を受けるとともに、新たな評議員を選任しなければならない。

 なお、評議員の選任は、社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者のうちから、定款の定める方法に従って選任することとされており、実務上は、
(i) 理事会が評議員選任委員を選任する、
(ii) 理事会が評議員選任委員会を招集する、
(iii) 評議員選任委員会において理事会が推薦した候補者のうちから評議員(理事の員数を超える数)を選任する、
といった手順で評議員を選任するのが一般的な運用となっている(注5)。

 なお、理事又は理事会が

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