[視点]

2021年10月号 324号

(2021/09/15)

イノベーション創出につながるM&A

大井 悠紀(西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士)
  • A,B,EXコース
はじめに

 産学官各界様々な分野・規模でイノベーションの創出に向けての議論、取組が行われているが、イノベーションの創出、促進は、日本の経済成長を拡大させるための最重要課題の一つである。AI、情報処理分野をはじめとする急速な技術革新や、カーボンニュートラル・ESGといった持続可能な社会への取組強化を受けてグローバルに産業構造が大きく変化する中で、日本でも様々な形で各企業においてイノベーションを創出、促進することを目指したM&Aが多数行われている。そのようなM&Aについて、イノベーションの創出、促進という視点から、以下、取引類型毎にそれぞれの留意点について、簡単な整理を試みたい。

イノベーションの意義と必要性の再確認

 「イノベーション」という用語は、必ずしも一義的に用いられているわけではないようである。英単語の直訳としては「革新」といった語があてられるが、技術革新との意味で捉えられることもある。経済成長を実現させるためのイノベーションとの文脈では産業技術のみに限定されるものではなく、より広くビジネス・モデルであったり、アイデアや考え方、組織の在り方等を含むものであり、ここでは、社会に新たな価値をもたらす革新、といった意味で用いたい。

 イノベーションと経済成長との関係については、生産関数(Production Function)の考え方があてはまるとされる。すなわち、以下の図に示す生産関数では、横軸が投入量、縦軸が生産量を表すところ、経済成長との兼ね合いでは、横軸が生産要素(典型的には労働力・資本)の投入量、縦軸が国内総生産(GDP)として捉えることができるとされる。

グラフ

 まず、ここから単純に読み取れるところとして、

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