M&Aにおけるブランド評価 今日、日本企業の中でもM&Aは成長に向けての当たり前の選択肢になってきている。そのような状況で、買収前の
デューデリジェンス(DD)はディールブレーカーというダウンサイドのみならず、バリューアップというアップサイドを把握するビジネスDD(BDD)の重要性が高まってきていることは周知の事実である。
但し、BDDの検討内容に関しては現在も大いに発展途上である。BDDにおいて事業モデルにおけるコストダウン余地や既存事業での合併による売上拡大余地等、成果がはっきり見えている施策への評価は、当然のことながらしっかりと検討されている。また、自社にない、或いは強化したい技術力、人材や販売網の獲得なども日本企業に共通するM&Aの目的となっているが、それらの効果検証についてもBDDにおいてカバーされてきている。
一方、M&A巧者である欧米企業に比べ大いに遅れているのが、BDDにおけるブランドの評価である。日本企業ではM&Aでブランドを買う意識は少ないが、海外のM&A巧者は技術、製品、人材等と同様にブランドをどう評価し、どう生かしていくかは重要なアジェンダとなっている。
つまり、売上向上や収益改善の評価にはブランド起点でのBDDが大いに貢献する。買収対象ブランドのブランド力を活かして既存事業の弱いセグメントを強化する、或いは、持ち前のブランド・イメージを生かして新規事業領域に進出するなど、ブランド力で事業成長や収益改善の機会を評価するのである。また、その先には買収ブランドを強化して、海外に横展開していくことでグローバル競争力を高められる等、ブランド起点のM&Aは企業にとっての大きな成長戦略になり得るのである。
ブランドとは?ブランド力をどのように測るのか?
■筆者プロフィール■
古谷 公(ふるや・とおる)
KPMG FAS マネージングディレクター
Strategy & Integration
Customer, Brand & Marketing Advisory(CBMA)統括
タイヤメーカーでマーケティング関連業務を経験した後、外資系経営戦略コンサルティングファームでコンサルティングに携わる。その後、外資系企業再生ファーム、グローバルブランドコンサルティングファームを経て、KPMGに参画。長きにわたり戦略コンサルティングに従事し、消費財・流通、自動車関連、ライフサイエンス、メディアなどの業界に対して、ブランド戦略策定、マーケティング改革、ブランディング強化、プライシング/ROIマーケティング実行、組織オペレーション改革、等に関する幅広いプロジェクトに携わる。真の成果実現に向け、顧客を中心に据えての本質的な戦略転換、抜本的な企業変革に日夜取り組んでいる。