[M&A戦略と会計・税務・財務]
2014年11月号 241号
(2014/10/15)
1. はじめに
国内市場での競争が飽和し、また経済のグローバル化を契機に海外企業との競争が激化する昨今、日本企業の間でも、グローバル市場から見た自社事業の位置づけの冷静な評価に基づく事業の選択と集中が、キーテーマのひとつとして認識されてきているのではないかと感じられる。社内資源を重点領域へ投入し、より成長が見込まれる分野を集中的に伸ばしていくためには、自社の事業ポートフォリオの見直しによるコア・ノンコア事業の洗出しが必要不可欠である。ノンコアと分類された事業がある場合、会社が取りうる戦略手法としては、分社化及び事業の売却検討が考えられるであろう。ノンコア事業を少しでも高く売却することにより、得られた資金をコア事業に集中再投資し、効果的な成長を望むことが可能となるのである。
一方、事業分離、すなわちカーブアウトを伴う事業売却は、タスクの複雑性、ステークホルダーの多さ、人材への配慮の必要性などから、一般的に難易度が高いプロジェクトとなる傾向がある。一般的に買い手側においては、カーブアウト案件における財務デューディリジェンス実施の過程で、スタンドアローンコストの詳細分析や、オペレーション分離に伴うカーブアウトアセスメントなどにより、事業を切り分けることによる影響の精緻な把握のために、様々な分析が検討・実施されている。しかしながら、売り手側が事業の分離売却案件を進める中で、そのプロセスを適切に管理し、売却価値を最大化させるための手法を確立できている企業はまだ少ないのではないだろうか。
本稿では、カーブアウト案件における売却価値最大化の一助となるよう、売り手サイドの留意点や施策をまとめることとする。
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