[視点]

2025年1月号 363号

(2024/12/10)

人的資本経営と知と経験のD&I

梯 慶太(HIRAKUコンサルタンシーサービシズ代表 ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング シニアコンサルタント)
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 人的資本経営が日本企業の主要な経営関心テーマとして定着してきた。

 筆者は、2020年9月に人材版伊藤レポートを発表した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」に参加、その後も大手企業の経営人事コンサルティングを行いながら日本企業の人的資本経営の実践動向を観察・フォローしてきた。

 ここでは、改めて人的資本経営の背景と方向性を振り返るとともに、人的資本経営で陥りやすい罠、そして人的資本経営で重要な要素となっている「動的な人材ポートフォリオ」と「知と経験のD&I(ダイバーシティ・アンド・インクルージョン)」、そして最後に海外を含めた人的資本経営のスコープについて論考していきたい。

1. 人的資本経営の背景と方向性

 人的資本経営とは「人材を経営上の最も重要な資本と捉え、すべての人的資本を活かし、その価値を持続的に向上させる人材戦略の実践を通じて、経営目的の実現と企業価値の向上をはかる経営のあり方」(出典:人的資本経営の潮流と論点2023 (株)リクルート)だとする定義が妥当だろう。

 しかしこの定義だけを読むと抽象的でわかりにくい。2020年9月に発表されたオリジナルの人材版伊藤レポートを読むと、人的資本経営の背景と目指すべき方向性が理解できる。

 まず1つ目に、日本は先進国と比較して新たなサービスを生み出せず、付加価値が向上していないという背景がある。

 2つ目に、


■筆者プロフィール■

梯 慶太(かけはし・けいた)梯 慶太(かけはし・けいた)
HIRAKUコンサルタンシーサービシズ代表
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング シニアコンサルタント
1985年日本板硝子(株)入社。99年NSGホールディングUSA社出向、02年同社社長。06年ピルキントン社買収後、統合推進本部兼務。07年日本へ帰国、買収組織統合、グループ人材開発、日本を含むアジア統括人事に従事。12年執行役員就任。08年報酬・指名委員会事務局長。17年I&D運営委員会議長。20年同社執行役員退任、独立開業し国内外企業へ経営人事コンサルティングサービスを提供中。
20年経済産業省の「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」委員。

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