はじめに 公開買付制度について、2024年10月1日より、「
公開買付けの開示に関する留意事項について(公開買付開示ガイドライン)」(注1)(以下「本ガイドライン」という。)に基づく運用が開始された。本ガイドラインは、発行者以外の者による公開買付け(以下「TOB」という。)に係る開示書類の審査を行う関東財務局に対して審査に当たっての留意事項を示すとともに、法令上記載が求められる開示事項等についての考え方を示すことを目的としている。運用開始に先立ち、本ガイドライン(案)に関するパブリックコメント(以下「パブコメ」という。)の結果も公表されている(注2)。本ガイドラインは、30頁を超え、かなり詳細にわたり踏み込んだ開示が求められている項目もあり、また、法令等では明示的に求められていない事項について新たに審査項目として明確化された論点もある。これまでの金融庁及び関東財務局のベストプラクティスの集大成といえそうである。
本稿は、本ガイドラインについて、全般的な解説を意図するものではないが、法律家に限らず、企業のM&A担当者や投資銀行のバンカーなど、TOBの実務に携わる機会のある皆様にとってお役に立つよう、知っておくべき実務に効くポイント7つを選んで解説する。本ガイドラインを契機として、TOBの実務のポイントにも理解を深めていただけるよう、本ガイドラインに直接記載されていない内容であっても、関連する最新のトピックについてもあわせて解説するように心がけた。本稿をきっかけに、TOBの実務について理解を深めていただくきっかけにもなれば幸いである。
■ 筆者略歴
森 幹晴(もり・みきはる)
弁護士・ニューヨーク州弁護士
東京国際法律事務所の共同創業者、代表パートナー。クロスボーダーM&A、国内M&A・TOB、エネルギー・インフラ案件、ヘルスケア、紛争案件、危機管理・コンプライアンス案件等で、日本企業やグローバル企業を代理する。日本経済新聞社の「2023年M&A弁護士ランキング 総合ランキングトップ20」にランクインするなど、各種メディアのランキングを受賞。主な著作は、『クロスボーダーM&Aの契約実務』(編著)(中央経済社、2021)、『場面別 公開買付けの実務』(中央経済社、2023)。
クロスボーダーM&Aなど様々なテーマでセミナーや講演を行い、日本経済新聞社のThink!エキスパートを務めるなど、主要経済紙や雑誌にコメントが掲載される。上場企業の社外役員、企業不祥事の特別調査委員会 委員長、医薬品企業法務研究会 国際問題研究部会アドバイザー、東大法曹会 常務理事を務める。2002年東京大学法学部卒業、2011年コロンビア大学法学修士課程修了。