[M&A戦略と法務]

2025年2月号 364号

(2025/01/15)

HoldCoファイナンスの法的整理・分類と活用事例

伯耆 雄介(TMI総合法律事務所 パートナー 弁護士)
  • A,B,C,EXコース
第1 はじめに

 近時、LBOファイナンスの案件の増加・金額規模の増大に伴い、そのストラクチャーは多様化している。特に、HoldCo(ホールドコ)ファイナンス(又はHoldCoローン)といわれる、買収SPC(OpCo(オプコ)(注1))の持株会社(HoldCo)に対するデット性のファイナンスを用いるスキームが近時増加しているところである。HoldCoファイナンスは、OpCoのファイナンサーであるシニアレンダーから見たエクイティを積み増すことができ、シニアレンダーにfavourな形でのデット調達が可能となることや、対象会社が直接に返済の責任を負うデットが少なくなる場合があることが、対象会社や事業承継案件におけるオーナーに好まれることがあることなどから、その検討・採用が増加しているものと考えられる。

 他方で、一口にHoldCoファイナンスといっても、そのコンセプトは一様ではなく、多様なバリエーションが存在する。このことから、実際の取組みにおいて、関係当事者間で共通の理解に至るまでに時間を要したり、ストラクチャリングやドキュメンテーションにおいて協議が錯綜するケースも散見される。

 そこで、本稿では、筆者の実務経験をもとに、HoldCoファイナンスのコンセプトのパターンや実務上の留意点などについて、主として法的な観点から、一定の考え方を示すことを試みる。

 なお、HoldCoファイナンスの概説を含めた、近時のLBOファイナンスマーケットの分析については、笹山幸嗣・神田敬植「LBOファイナンスマーケットの歴史と現状――ファイナンスコストの上昇など、市場は「転換点」を迎えつつある」MARR Online(2023年12月21日)が詳しい。LBOファイナンスの黎明期から現在に至るマーケットの変遷について、要点を絞りつつも豊富な情報と見識に基づいて整理した貴重な論考であるため、ぜひご一読されたい。

第2 HoldCoファイナンスの基本的な考え方

1 基本的なストラクチャーと構造劣後型

 HoldCoファイナンスの基本的なストラクチャーは、図表1のとおりである。上図がHoldCoファイナンスを用いない通常のストラクチャーの例を、下図がHoldCoファイナンスを用いるストラクチャーの例を、それぞれ示す。


■筆者プロフィール■

伯耆氏

伯耆 雄介(ほうき・ゆうすけ)
TMI総合法律事務所パートナー弁護士。2013年東京大学法科大学院修了。2020年King’s College London (Master of Laws in International Financial Law) 修了。
LBOファイナンス及びそれに伴うM&Aを多く取り扱い、大型案件から小規模事業承継案件に至るまで、レンダー・スポンサーの双方において、多様な案件でリーガル・アドバイザーを務める。

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