[視点]

2025年4月号 366号

(2025/03/11)

2つの「新陳代謝」の促進とM&Aの役割

安田 行宏(一橋大学大学院経営管理研究科 教授)
  • A,B,C,EXコース
1.はじめに

 物価高が問題視されるように日本経済はデフレからインフレ時代へ突入し、日本企業は1つの転換点を迎えている。加えて高齢化と人口減少の影響が一層顕在化してくることが懸念される。こうした中で日本経済のパフォーマンス向上に向けて、本稿では、新陳代謝の促進をキーワードに、日本企業の現況と課題について検討する。

 日本企業と一口にいっても約359万社あり、グローバル市場で競争する大企業から中小企業まで幅広い。このうちいわゆる中小企業数は358万社(者)であり、その内訳は法人が約160万社、個人事業が198万者となっている(注1)。本稿では、日本企業のパフォーマンスの向上に向けて、開業率・廃業率で測られる古くて新しい新陳代謝の問題と、上場ステータスへ新規上場・廃止というもう1つの「新陳代謝」の促進の重要性の2つの課題を考察する。成熟化した日本経済の中で企業のライフサイクルにおけるM&Aの役割について論じてみたい。

2.市場からの退出とM&A

 市場の退出に関して、年間倒産件数を見ると足元では1万件を超えた。


■筆者プロフィール■

安田氏安田 行宏(やすだ・ゆきひろ)
一橋大学大学院 経営管理研究科教授 
2002年に一橋大学大学院商学研究科修了(博士(商学))。東京経済大学経営学部専任講師・助教授・准教授・教授を経て、2018年より現職。日本金融学会常任理事、日本ファイナンス学会理事。主著に『日本企業のコーポレート・ガバナンス エージェンシー問題の克服と企業価値向上』(共編著、2020年、中央経済社)、近著に“Do foreign bank investors promote acquirer bank value in Asia-Pacific countries?” (with Y. Shirasu, 2025, Quarterly Review of Economics and Finance, 101963) など。

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