1. はじめに
2025年1月20日に米国で発足したトランプ新政権において、環境・エネルギー政策の見直しは、米国第一主義を掲げる同政権の優先事項(移民政策、環境・エネルギー政策、既存の行政機構改革、米国の価値観の復活)の中でも、移民政策と並んで特に重点が置かれる政策とされる。
トランプ大統領の就任日以後署名された、環境・エネルギー政策関連の大統領令等(大統領令、覚書、布告)は、①「パリ協定」からの離脱、②自動車の温室効果ガス排出規制や燃費規制の緩和、電気自動車(EV)の普及策の撤廃、③風力発電の見直し(洋上・陸上風力発電向けの、連邦政府が管理する土地の貸与や認可を停止)、④エネルギー非常事態宣言(国内のあらゆる資源の活用を命じる)、アラスカの液化天然ガス(LNG)の開発の推進、⑤LNGの新規輸出許可の審査再開、⑥連邦政府の調達から紙ストローを排除し、プラスチック製のストローを不利に扱う政策の廃止等を含む。
このような米国における環境・エネルギー政策が、我が国も含めた主要国の企業行動にどのような影響を与えるかは不明だが、米国の国際連携からの離脱や脱炭素への消極姿勢による各国の足並みの乱れや、連携枠組みの弱体化、米国企業の国際連携からの離脱による、企業部門における国際連携の弱体化を指摘する声もある(注1)。以下では、我が国の環境・エネルギー政策の方向性と関連する税制の対応を解説する。
■筆者プロフィール■

荒井 優美子(あらい・ゆみこ)公認会計士/税理士
コンサルティング会社、監査法人勤務後、米国留学を経てクーパース&ライブランド(現PwC税理士法人)に入所し現在に至る。クロスボーダーの投資案件、組織再編等の分野で税務コンサルティングに従事。2011年よりノレッジセンター業務を行う。日本公認会計士協会 租税調査会(出版部会)、法人税部会委員。一橋大学法学部卒業、コロンビア大学国際公共政策大学院卒業(MIA)、ニューヨーク大学ロースクール卒業(LLM)。