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(2025/03/12)

医療法人の事業承継・再生系M&Aの留意点

石田 渉(森・濱田松本法律事務所 パートナー 弁護士)
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1.はじめに

 日本が人口減少局面を迎える中、コロナ禍が収束し外来患者数自体は回復傾向にある。しかし、コロナ禍における補助金依存体質、過剰な設備投資、医師・看護師等の不足、材料費・経費等のコスト増等の要因により、収益・資金繰りの悪化に陥る医療法人(病院)が増加傾向にある。このような医療法人においては、M&Aによる事業承継が選択肢となるところ、医療法人のM&Aにおいては、医療法人の法人格としての特殊性(非営利性の原則等)・業法対応等の観点から、通常の株式会社のM&Aとは承継スキーム等が大きく異なり、固有の対応・工夫が必須となる。

 また、上記のような収益・資金繰りの悪化が深刻化した医療法人においては、私的整理手続等を介する過剰債務の整理が抜本的な再生のためには不可欠な場面も出てくる。しかしながら、再生局面においても、病床数維持に向けたハードル、病院使用許可取得等における行政対応、医療審議会との折衝等のスケジュール等の観点から、通常の株式会社の再生案件とは異なるスキーム選択・スケジュール調整における固有の論点・対応が多数存在する。

 本稿では、上記のような医療法人(病院)を取り巻く環境や医療法人に係る特殊性等を踏まえ、医療法人のM&A・再生案件(再生系M&A等)に係る留意点を解説する。


■筆者プロフィール■

石田 渉(いしだ・わたる)

石田 渉(いしだ・わたる)
森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士・ニューヨーク州弁護士
2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院修了、2011年弁護士登録、2017年ニューヨーク大学ロースクール修了、2017年McDermott Will & Emery法律事務所(ワシントンD.C.)執務、2018年ニューヨーク州弁護士登録、2020年NEXs Tokyoメンター、2022年中小企業庁 認定経営革新等支援機関認定。
クロスボーダー案件を含め、国内外のM&A・危機管理・訴訟紛争・人権対応を含むコンプライアンス対応案件において多くの経験・知見を有する。また、コンサルティングとして事業戦略・M&A戦略の立案・遂行を支援した知見も踏まえ、中小企業から上場企業・大企業まで幅広い企業のM&A・危機局面を支援している。
受賞:The Best Lawyers in JapanTM (2024 edition)ほか多数。
著書:「私的整理における既存株主の取扱い―直近実例を踏まえて」(共著)NBL1241号(2024)、「成立事例にみる中小企業版事業再生ガイドラインの実践的活用」(共著)事業再生と債権管理36巻4号(2023)ほか多数。

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