第1 はじめに 近時、上場会社が自らの発行する株式を対価の全部又は一部として対象会社を買収する、いわゆる株式対価M&Aが活発に行われている。2021年3月に施行された改正会社法において、
株式交付制度が導入され、自社の株式を対価としてM&Aを行う場合のスキームの選択肢が1つ増えることとなった。株式交付は、その実施件数こそ、開示された限りで25件程度(2025年3月31日時点)に留まっているものの、それ以前に株式対価M&Aのスキームとして採用されてきた第三者割当や株式交換にはない法的なメリットがあり、着実に利用実績が重ねられている。
本稿は、株式対価M&Aについて、第三者割当を活用した方法、株式交換、株式交付といった代表的なスキームを比較検討し、どのスキームを選択すべきかを判断するにあたっての法的留意点の解説を行う。また、株式交付は、その利用に実務上の一定の障壁が認められており、その改正が議論されているため、かかる改正の方針と展望についても焦点を当てる。
第2 株式対価M&Aの特徴とスキーム 1 株式対価M&Aとは 株式対価M&Aとは、一般的には、
■筆者プロフィール■

藤井 康太(ふじい・こうた)
TMI総合法律事務所パートナー弁護士。2021年シカゴ大学ロースクール卒業(LL.M.)、2022年ニューヨーク州及びカリフォルニア州弁護士登録。国内外のM&A及びベンチャーファイナンスに従事。M&Aでは、事業会社、PEファンド、スタートアップ等を代理し、クロスボーダーを含めた多様な案件に従事。