[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2022年8月号 334号

(2022/07/11)

【丸の内キャピタル担当者が語る】神戸製鋼所子会社2社の買収経緯と今後の成長戦略

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武藤 貴史氏

武藤 貴史(むとう・たかし) 丸の内キャピタル マネージングディレクター

東京大学経済学部卒業。東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、国内営業店を経てデリバティブ商品のトレーディング・投資家営業に従事。ボストンコンサルティンググループにて、商社・金融機関中心に経営戦略策定、企業買収等のコンサルティングに関わる。アドバンテッジパートナーズにて企業買収に従事し、コメダの案件では、主担当者として買収及びバリューアップを推進。その後、コメダに経営陣として転籍、CFO及び管理部門トップとして同社チェーンの全国展開及びIPOをリード。2017年6月より丸の内キャピタルに参画。2022年7月マネージングディレクター。

神戸製鋼所の非鉄金属加工事業

 2022年3月、神戸製鋼所は子会社のコベルコマテリアル銅管(現・KMCT)と神鋼メタルプロダクツ(現・門司メタルプロダクツ)を丸の内キャピタルのSPC「エムキャップ7号」に売却した。

 神戸製鋼所グループは「KOBELCOグループ 中期経営計画(2021~2023年度)」において、実践すべき最優先課題として「安定収益基盤の確立」と「カーボンニュートラルへの挑戦」を掲げている。その中で、素材系事業については、戦略投資の収益貢献及び不採算事業の再構築を重点施策と位置づけて取り組んできた。非鉄金属の加工事業についても、これまで培ってきた基盤を活かしつつ、将来の成長、発展に向けた最適な施策が検討されてきており、この方針のもとで今回の2社売却が実行された。

 KMCTは、2004年に神戸製鋼所と三菱マテリアルの国内及びASEAN地域における銅管事業の統合によって誕生し、神戸製鋼所が発行株式数の55%、三菱マテリアルが45%を保有。国内及びタイにおいて業界のリーディングカンパニーとして空調機器用を中心に、冷凍用、建築用、給湯用、電子機器用など広範な分野で使用される銅管製品を製造・販売している。2021年3月期の売上高は397億円。

 また、門司メタルプロダクツは、神戸製鋼所が発行株式数の90%、奥田金属が10%を保有し、1988年に操業開始して以来「総合非鉄加工メーカー」として主力製品である銅合金管とモールドを中心に多種多様な製品を製造・販売。銅合金管は主に国内の原子力発電・火力発電用復水器、海水淡水化装置、船舶・石油化学用熱交換器などに幅広く使用されている。2021年3月期の売上高は約32億円となっている。

 KMCTを巡っては、日本産業パートナーズが運営するファンドを通じて同社を買収し、古河電気工業グループの銅管・銅板事業と統合する計画があった。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)による環境変化を受けて2020年12月に中止になったという経緯があった。

 2社を買収した丸の内キャピタルは、三菱商事85.1%、三菱UFJ 銀行14.9%の出資によって2008年に設立されたプライベート・エクイティ・ファンドの運営会社。2008年に組成された丸の内キャピタル第1号投資事業有限責任組合(1号ファンド)ではタカラトミー(投資時期2009年6月、15%出資、2015年5月譲渡)、ジョイフル本田(2009年10月、31.4%、2016年3月譲渡)、山本製作所(2011年2月、出資比率非公開、2015年2月譲渡)、成城石井(2011年5月、100%、2014年10月譲渡)などに投資され、2016年3月に組成した2号ファンドではクイーンズ伊勢丹を運営しているエムアイフードスタイルなどへの投資実績がある。

 丸の内キャピタルは今回買収した2社について、どのような成長戦略を描いているのか。担当の武藤貴史マネージングディレクターに聞いた。

<インタビュー>
ロールアップによって海外生産拠点の強化を図る

 武藤 貴史(丸の内キャピタル マネージングディレクター)

買収の経緯

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