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(2025/05/29)

同意なきTOBへの対抗措置の差止めを認めなかった東京地裁決定の解説[ニデック 対 牧野フライス製作所事件]

松下 憲(森・濱田松本法律事務所外国法共同事業 パートナー弁護士)
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 2024年末、ニデック株式会社(以下「ニデック」)が、株式会社牧野フライス製作所(以下「牧野フライス」)について、事前に同社と協議することなくTOBの開始予定を公表した。これに対して牧野フライスが導入した「買収への対応方針」(以下「本対応方針」)に基づく対抗措置(新株予約権無償割当て)について、東京地方裁判所がニデックによる差止仮処分命令申立てを却下する決定(以下「本決定」)を下した。以下、同決定の内容及び実務への影響について解説する。

1 事案の概要

 ニデックは、牧野フライスに対し、2024年12月27日、事前の打診や連絡なく、牧野フライスを完全子会社化することを目的として、2025年4月4日を開始予定日とするTOB(以下「本TOB」)の実施を提案(以下「本提案」)するとともに、本TOBの開始予定を公表した。牧野フライスは、特別委員会を設置の上で本提案の是非等について検討を行い、ニデックに対し、第三者からの提案(以下「第三者提案」)との比較検討を可能にすること等を理由に、本TOBの開始を同年5月9日まで延期するよう複数回にわたって要請したが、いずれも拒否又は未回答であったため、同年3月19日、本対応方針を導入した。その後、ニデックが、予定どおり同年4月4日に本TOBを開始したため、牧野フライスは、同月10日、本TOBに対して反対の意見表明をするとともに、本対応方針に基づく対抗措置として新株予約権無償割当て(以下「本無償割当て」)を行うことを決議した。

 これに対し、ニデックは、2025年4月16日、東京地方裁判所に対して本無償割当ての差止仮処分命令の申立てを行ったが、同年5月7日、申立てを却下する旨の本決定がなされたことを受け、その翌日に本TOBを撤回した。

2 対応方針の概要



■筆者プロフィール■

松下 憲(まつした・あきら)

松下 憲(まつした・あきら)
2005年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2006年弁護士登録。2012年コーネル大学ロースクール修了(LL.M.)。2013年ニューヨーク州弁護士登録。2022年~京都大学法科大学院非常勤講師(M&A法制担当)。国内外のM&A、同意なき買収、アクティビスト対応、プロキシーファイトを含む株主総会対応、プライベート・エクイティ、ジョイント・ベンチャー等を専門としつつ、企業法務全般を幅広く手掛ける。著作:「買収防衛策に関する裁判所の判断枠組みと実務からの示唆(上・中・下)」(共著)(旬刊商事法務、2022)、「アクティビスト株主対応の最新のスタンダード(上・下)」(旬刊商事法務、2021)ほか多数。

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