右から、野口真人・代表取締役、山田昌史・常務取締役
MBOや
同意なき買収提案等の活発化に伴い、取引条件の妥当性等について判断を行う特別委員会への注目度が高まっている。第三者算定機関または
フィナンシャル・アドバイザーとして、多くの特別委員会に助言をしてきたプルータス・コンサルティングの野口真人・代表取締役と山田昌史・常務取締役に、特別委員会への助言業務の状況や実務上の留意点について聞いた。
独自のアドバイザーを起用するケースの増加 ―― M&Aの対象会社が特別委員会を設置するケースが目立ちます。特別委員会に対する助言業務は増えていますか。
山田 「はい、大幅に増えています。まず、2019年6月に経済産業省が『
公正なM&Aの在り方に関する指針』を公表して以降、MBOや支配株主による
完全子会社化など、構造的に利益相反が懸念されるM&Aにおいては、買収対象会社に特別委員会を設置することが実務上完全に定着している状況にあります。さらに、以前は株主が株式の買取価格に大きな不満を持つことが想定される事案でない限り、特別委員会が独自のアドバイザーを起用することは一般的ではありませんでしたが、指針の公表以降は状況が変化し始め、特にここ1~2年ほどで状況が大きく変わってきています。取引の妥当性について特別委員会に説明責任が求められる局面が増えているため、訴訟リスクが必ずしも高いとはいえない取引においても、対象会社のアドバイザーとは別に、特別委員会が独自のアドバイザーを起用する流れが強まっています。
とりわけ2023年3月のファミリーマート事件東京地裁決定は、特別委員会の実務に大きな影響を及ぼしたといえます。
■野口 真人(のぐち・まひと)
プルータス・コンサルティング代表取締役社長、京都大学経営管理大学院特命教授。
京都大学経済学部卒業。富士銀行(現みずほ銀行)、JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス証券を経て、2004年に企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。著書:『資本コスト経営のすすめ なぜあなたの会社はPBR<1倍なのか』(日本経済新聞出版、2025)ほか。
■山田 昌史(やまだ・まさし)
プルータス・コンサルティング常務取締役、米国公認会計士、京都大学経営管理大学院客員教授。
早稲田大学商学部卒業。組織再編・種類株式等の有価証券発行を中心に、大手企業からベンチャー企業までさまざまなフェーズの資本政策関連のアドバイザリー業務に従事し、多数の案件を手掛ける。著書:『企業価値評価の実務Q&A〔第4版〕』(共著)(中央経済社、2018)ほか。