[【事業承継】中堅中小企業の事業承継M&A ~会計税務の実務上の頻出論点~(M&Aキャピタルパートナーズ)]

(2019/07/25)

【第2回】 株式譲渡対価の一部を役員退職金として支給する際のポイント

桜井 博一(M&Aキャピタルパートナーズ 企業情報第二部 公認会計士・税理士)
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はじめに


  第1回では事業承継M&Aの実務でよく論点となる、廃業・清算とM&Aの税務上の比較について取り上げ、税務上の基本的な相違点から売手オーナーが受ける手取り額への影響等について解説しました。

 前回の内容にも関連するところですが、実務上では、売手オーナーの手取り額に与える税務上の影響や買手会社のメリット等を加味しスキームが決定されていくことも多く、本稿では株式譲渡実行時の実務でよく利用される手法として、株式譲渡対価の一部を役員退職金として支給する際のポイントについて解説していきます

株式譲渡対価の一部を役員退職金として支給する理由

  事業承継M&Aにて、売手への株式譲渡対価の一部を役員退職金として支給することが実務上ではよくあります。理由としては、売手と買手会社でそれぞれ次のメリットがあるためです。







  なお、役員退職金は、税務上、その支給額が無制限に認められているわけではないものの、明確に定められた税法上の規定も存在しません。そこで、過去の判例等から、退職金の支給額を決めるにあたって、次のような算定式を実務上使用するケースが一般的です。

<役員退職金の一般的な算定式>


  上記算定式のポイントについては後述しますが、まずは売手・買手会社のそれぞれのメリットについて具体的に記載していきたいと思います。

 売手のメリット①~税引き後の手取り額を最大化させることができる~


1でも解説した通り、個人の所得税の計算において、譲渡所得と退職所得では税率が異なるため、その差を利用することで、売手の税引き後の手取り額を最大化させることができます。

株式譲渡を前提とすると、株式の譲渡による税率は、取得費や譲渡費用を除いた譲渡所得に対し、20.315%(住民税・復興税含む)となっています。


 一方、退職金の税率は、勤続年数に応じた退職所得控除を差し…

■筆者経歴
桜井 博一(さくらい・ひろかず)
大学在学中に公認会計士試験に合格後、卒業後は三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。中堅中小企業向けの融資業務や再生支援業務等を経て、株式会社KPMG FASにて中堅・上場企業向けの財務・事業デューデリジェンス業務を中心としたM&Aアドバイザリー業務に従事した後、M&Aキャピタルパートナーズ株式会社に参画。物流業界を中心に、飲食業界、アミューズメント業界等、幅広い中堅中小企業のM&A仲介業務に従事している。 

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