[【全体】M&A入門-M&A戦略立案からPMIまで(PwCアドバイザリー合同会社)]

(2022/04/28)

【第5回】エグゼキューション - バリュエーション

樫村 玲香(PwCアドバイザリー合同会社 シニアアソシエイト)
  • 無料会員
  • A,B,C,EXコース
はじめに

 M&A入門連載第5回目のテーマは、「バリュエーション」です。「一体この対象会社はいくらの価値があるのだろうか」という問いに答えを出すことが「バリュエーション」ですので、「バリュエーション」は、買い手をはじめ、M&Aのディール関与者全てにとって最も関心が高いテーマの一つです。

 M&Aの世界にいると「バリュエーションが合わない」という言葉をよく耳にします。これはM&Aが合意に至らなかった時によく聞かれる言葉です。M&A初心者にとっては、「バリュエーションが合わない」と言われると、「破談になったのは価格が原因だったということかな」という漠然としたイメージは湧くものの、その背景でどのような議論があったのか想像しにくいのではないでしょうか。実はM&Aの世界には、そのような業界関係者が好んで使う表現が多くあります。そこがM&A初心者に敷居が高いと思わせる原因なのかもしれません。

 「バリュエーションが合わない」をわかり易く言いかえると、売り手が提示した価格が「高すぎたから買えなかった」と言っているだけのことがほとんどです。でも実は「バリュエーションが合わない」という言葉にはもっと深い意味が込められています。高く売却したいと考えるのは売り手としては当然です。その売り手の戦略と、対象会社を活かしてどこまで収益を出せるか、それに基づいて買い手はどこまでの価格を提示できるのかが合わなかったのです。M&Aが合意に至らなかったのは、どちらか片方が原因を作ったのではありません。双方とも真摯な検討や議論を尽くしたにもかかわらず、価格について双方が納得する着地点を見いだせなかったという意味が「バリュエーションが合わない」という言葉に込められているのです。従って、売り手・買い手のいずれかを責めているわけでもありません。

 今回は、その奥深い「バリュエーション」について解説していきます。なお本連載では、「バリュエーション」の計算の中核をなす DCF法(Discounted Cash Flow法)や 類似会社比較法(マルチプル)等のテクニカルな個別論点については他書に譲り、むしろ エグゼキューションにおけるバリュエーションの使われ方や、その重要性について留意すべきポイントを把握できるように解説していきます。

続きをご覧いただくにはログインして下さい

この記事は、無料会員も含め、全コースでお読みいただけます。

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事

アクセスランキング