[クリーンテックと欧米エネルギー企業の最新M&A動向]

(2022/02/10)

【第1回】トタル・シェル・BPの組織変革と活発化するクロスオーバーM&A

出馬 弘昭(IZM代表)
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 世界的なエネルギー大転換時代が始まった。脱炭素社会の実現に向け、化石燃料をこれまでのように燃やせなくなる時代が到来し、「電化」への傾向が明白となっている。電化困難な領域において特に期待されているのは水素だが、脱炭素社会の実現には、より広範囲かつ飛躍的なイノベーションが必要となるだろう。また、エネルギー以外にも、金融や事業会社を問わず、あらゆる業界でイノベーションの主役がスタートアップとなる中、大企業はそれらスタートアップの成長を支援する「脇役」となる構図が目立つ。

 脱炭素に資するスタートアップは、「クリーンテック(Cleantech)」と呼ばれる。クリーンテックの主なカテゴリーは、エネルギー&パワー(再生可能エネルギー、蓄電池、水素、新型核融合炉、マイクログリッドなど)、資源&環境(CCUS、炭素会計、蓄電池リサイクルなど)、交通&ロジステックス(EV充電管理、都市交通データ分析など)、農業&食料(スマート農業、代替たんぱく質、食料廃棄物削減など)、材料&化学(軽量複合材料、CO2フリー製鉄など)――と多岐にわたっている。

欧州の高い環境意識

 このクリーンテックの分野で、日本は欧米に大きく劣後している。

 第1に、日本には世界で戦える「主役」のスタートアップがまだ誕生していない。過去に「グローバルクリーンテック」ベスト100社にランクインした日本のスタートアップは1社もない。そもそも、日本のスタートアップの絶対数も欧米の1%未満に過ぎない。第2に、クリーンテックの分野では脇役である日本の大企業の存在感も低い。第3に、スタートアップを創出する国や自治体のエコシステムも脆弱である。「クリーンテックエコシステム都市ランキング」で、東京は世界ベスト35位に入らず、アフリカのナイロビ、中東のカサブランカ、アジアのスリランカ以下の評価となっている。…

■筆者履歴
IZM代表 出馬 弘昭出馬弘昭(いずま ひろあき)
IZM代表。1983年京都大学工学部物理工学科卒業。大阪ガスに入社し、同社R&DおよびIT部門でデータ分析、行動観察、オープンイノベーション事業などを立上げ。2016年より米シリコンバレーに駐在し、欧米のクリーンテックとのビジネス開発を開拓。2018年に東京ガスに入社し、シリコンバレーのCVC立上げに参画。2021年に帰国し、東北電力に入社し、事業創出部門のアドバイザーに従事。製造業やコンサルティング大手などの外部顧問、海外スタートアップの日本展開支援なども務める。南カリフォルニア大学ロボット研究所客員研究員、京都大学非常勤講師、大阪市立大学非常勤講師、日本オペレーションズリサーチ学会副会長などを歴任。

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