[クリーンテックと欧米エネルギー企業の最新M&A動向]

(2022/03/25)

【第3回】仏Totalの最新動向(後編)

出馬 弘昭(IZM代表)
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グローバルクリーンテック動向:Total(後半)

 連載の第2回では、仏石油メジャーTotalの近年の投資活動のうち、CVC部門による欧米スタートアップへの直接投資事例を紹介した。今回は、CVC部門によるベンチャーキャピタル(VC)へのLP投資の事例と、Total本体によるM&A事例を紹介する。

VCへのLP出資

 Totalは本稿執筆時点で、11社のVCにLP出資している(注1)。

■ Chrysalix Venture Capital
 Chrysalix Venture Capital(Chrysalix、所在地はカナダのバンクーバーとオランダのデルフト)はクリーンテック分野の最もアクティブな投資家の一つである。5つのファンドを組成し、ファンドサイズは3億米ドル。現在、アーリーステージのスタートアップ83社に投資している。日本企業の開拓に熱心であり、日本にエージェントもいる。筆者もChrysalix Venture Capitalの投資担当者との面会の経験があるが、他のVCと比べても、Total以外にもShell、仏EDFやマレーシア国営石油のPetronasをLPとし、この分野のトップVCとしての確固たる実績と自信を持っているとの印象を持った。三菱商事、Jパワーおよび日立建機も、Chrysalix Venture Capital にLP投資をしている。

■ Powerhouse Ventures
 米Powerhouse Venturesのファンドサイズは550万米ドルである。分散型エネルギー分野のアーリーステージ企業25社に投資をしている。スタートアップを育成し企業とマッチングするアクセラレータプログラムを持っており、定期的にシリコンバレーでイベントを開催し、筆者も参加したことがある。米Powerhouse Venturesのイベントは、スタートアップの創業者との対談が非常に有意義だ。特に彼らの起業の裏話は、日本の起業予備軍にとっても学ぶべき内容が多い。企業パートナーには伊Enel、英BP、Google、欧州船級協会のDNV、丸紅パワーが参加している。

■ Demeter Partners…


■筆者履歴
IZM代表 出馬 弘昭出馬弘昭(いずま ひろあき)
IZM代表。1983年京都大学工学部物理工学科卒業。大阪ガスに入社し、同社R&DおよびIT部門でデータ分析、行動観察、オープンイノベーション事業などを立上げ。2016年より米シリコンバレーに駐在し、欧米のクリーンテックとのビジネス開発を開拓。2018年に東京ガスに入社し、シリコンバレーのCVC立上げに参画。2021年に帰国し、東北電力に入社し、事業創出部門のアドバイザーに従事。製造業やコンサルティング大手などの外部顧問、海外スタートアップの日本展開支援なども務める。南カリフォルニア大学ロボット研究所客員研究員、京都大学非常勤講師、大阪市立大学非常勤講師、日本オペレーションズリサーチ学会副会長などを歴任。

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