[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2023年10月号 348号

(2023/09/11)

第222回 百貨店業界 ~市場縮小の中で大型再編(2007~2008年)後の大手百貨店はどう動いてきたか(第2回)

澤田 英之(レコフ 企画管理部 リサーチ担当)
  • A,B,EXコース
 前回に引き続き今回も百貨店業界の動向について述べてみたい。前回は、同業界の概況と2007年に大丸と松坂屋の経営統合によって発足したJ.フロント リテイリングの動向について概観した。今回は同年、J.フロント リテイリングの発足に続き、阪急百貨店と阪神百貨店との経営統合によって発足したエイチ・ツー・オー リテイリングの動向について解説する。

4. エイチ・ツー・オー リテイリング

■発足当時の状況

 2007年、J.フロント リテイリングの発足に続き、阪急百貨店と阪神百貨店との経営統合によってエイチ・ツー・オー リテイリングが発足した。地球環境になくてはならない存在である「水(H2O)」が、エイチ・ツー・オー リテイリングという社名の由来である。

 エイチ・ツー・オー リテイリング発足当時、阪急百貨店が東証1部上場会社である一方で、阪神百貨店は2005年に阪神電気鉄道(以下「阪神電鉄」)の完全子会社となり大証1部上場を廃止していた。2006年には親会社の阪神電鉄と阪急電鉄が経営統合して阪急阪神HDが発足したため、阪神百貨店は阪急阪神HDの連結子会社となっていた。

 前回述べたJ.フロント リテイリングの場合、当初は大丸と松坂屋という大手百貨店がそれぞれJ.フロント リテイリングの子会社となった。一方、エイチ・ツー・オー リテイリングの場合は阪急百貨店が阪神百貨店を株式交換によって完全子会社し、百貨店事業を新設分割することにより阪急百貨店が持株会社になることで発足した。エイチ・ツー・オー リテイリングは東証1部上場を継続(現在は東証プライム上場)しつつ阪急阪神HDの持分法適用関連会社となり現在に至っている。

 発足に向けた子会社再編などを経て、エイチ・ツー・オー リテイリングの傘下には百貨店事業の他にスーパーマーケットやPM(プロパティ・マネジメント)などを運営する子会社が入った(図表1参照)。

 主要事業の百貨店店舗をみると、阪急百貨店、阪神百貨店とも店舗が大阪府、兵庫県の阪急電鉄及び阪神電鉄沿線が多い(図表2参照)。阪急百貨店については統合前の2004年には「関西ドミナント戦略」を作成していたと伝えられている。前回述べたJ.フロント リテイリングの場合は、大丸、松坂屋とも全国展開をしていた百貨店の経営統合であったが、エイチ・ツー・オー リテイリングの場合は、より地域に密着した百貨店同士が統合した形になった。

 2008年にエイチ・ツー・オー リテイリング傘下で阪急百貨店と阪神百貨店は合併し、阪急阪神百貨店となった。ただ、「阪急」及び「阪神」というブランド名を継続して使用している。

(図表1)エイチ・ツー・オー リテイリング発足当初の事業構成
事業名主要子会社名
(孫会社等を含む)
(億円・2008年3月期)
売上高売上構成比
百貨店事業阪急百貨店、阪神百貨店351474.5%
スーパーマーケット事業阪急オアシス、阪急ニッショーストア89819.0%
PM事業阪急商業開発、アワーズイン阪急972.1%
その他事業(卸売業、運送業等)阪急キッチンエール(個別宅配業)2074.4%

(注)有価証券報告書より作成

(図表2)エイチ・ツー・オー リテイリング発足前の百貨店店舗(2008年3月期)
阪急百貨店阪神百貨店
うめだ本店(大阪府)
千里阪急(大阪府)
堺 北花田阪急(大阪府)
川西阪急(兵庫県)
宝塚阪急(兵庫県)
神戸阪急(兵庫県)
三田阪急(兵庫県)
四条河原町阪急(京都府)
有楽町阪急(東京都)
大井食品館(東京都)
都筑阪急(神奈川県)
梅田本店(大阪府)
阪神・にしのみや(兵庫県)
さんのみや・阪神食品館(兵庫県)
阪神・御影(兵庫県)

(注)有価証券報告書より作成

■百貨店事業

 その後の百貨店事業をみると、2010年に四条河原町阪急、さんのみや・阪神食品館、2012年に神戸阪急、2017年に堺 北花田阪急、そして2021年には三田阪急を閉店。競合環境の変化などにより営業継続が難しくなったという。

 一方で、2011年には博多駅に直結する阪急博多を開業した。阪急博多は九州新幹線の開通と九州旅客鉄道(JR九州)による博多駅ビルの再開発に伴い出店したものであり、エイチ・ツー・オー リテイリング発足前の2006年にJR九州と出店の合意をしていた。

 ただ、エイチ・ツー・オー リテイリングは博多への出店や関西で複数の店舗を閉鎖しながらも、長年に亘って拠点及び基盤としてきた関西で事業を強化する姿勢を維持してきた。2017年にはセブン&アイHD傘下のそごう・西武(東京都)が運営するそごう神戸店(兵庫県)及び西武高槻店(大阪府)を承継。2019年にはそれぞれの屋号をそごう神戸店から神戸阪急に、また、西武高槻店から高槻阪急に変更している(※参照)。

(※)承継発表時、エイチ・ツー・オー リテイリングとセブン&アイHDは、株式持ち合いによる資本業務提携に関する基本合意書を締結したが株式持ち合いは実現しないまま現在に至っている。


 2022年には、


■筆者プロフィール■
澤田 英之(さわだ・ひでゆき)
レコフ 企画管理部 部長(リサーチ担当)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

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