M&Aの最終目的は企業価値向上といわれるようになって久しい。これはブランド視点で紐解くと企業ブランドとしての提供価値の強化・拡張といえる。ただし、いくら素晴らしいブランドを買収しても、
PMIが失敗してブランド力の発揮が阻まれてしまっては買収の努力が全て水泡に帰す。また、当該ディールをうまく企業の中長期戦略のなかで意味づけてステークホルダーへコミュニケーションできなければM&Aを企業のブランド価値向上に活かしきれないといって良い。
M&Aは企業にとってブランド価値向上のまたとないチャンスであるにも関わらず、「どんなふうに世の中に発表するかは最後に考えればいい」「意識や文化の統合が大事とは言うけどね・・・」というクライアントのコメントに遭遇することは多く、ブランドアドバイザリーの視点からは非常に勿体無いと感じている。
本連載「ブランド起点のM&A」の最終回である本稿では、M&Aを企業のブランド価値向上に役立てるにはどうすればよいのか?について触れたいと思う。そのときのキーワードは「共創」である。
ステークホルダーと共創する企業ブランド価値 従来M&Aのプロセスにおいては、当事者の利益に関わる経営数字や組織効率化といった視点が中心となり、
■筆者プロフィール■
佐伯 尚子(さえき・なおこ)
KPMG FAS シニアマネージャー
自動車会社のグローバルマーケティングを経て、大手広告代理店にてストラテジックプランナーとして国内外グローバル企業の事業戦略、ブランド戦略、マーケティング戦略の策定や商品開発に参画後、国内最大手化粧品会社の経営戦略にて新規事業開発を経験し、KPMG FASに入社。