[M&A戦略と法務]

2021年11月号 325号

(2021/10/11)

イスラエルにおける投資・M&A実務(日米の実務との比較を踏まえて)

田中 真人(TMI総合法律事務所 弁護士。ニューヨーク州、カリフォルニア州弁護士、イスラエル外国弁護士)
  • A,B,EXコース
第1 はじめに

 近時、その高い技術からイスラエルスタートアップに世界中から資金が集まっている。IVC-Meitar Tech Reviewによれば、イスラエルのハイテク企業の2020年の資金調達総額は、過去最高額の約103億ドルだったが、2021年上半期の資金調達総額は約119億ドルとのことで、上半期の半年間で既に2020年の資金調達総額を上回っている。日系企業によるイスラエルスタートアップへの投資も、このコロナ禍においても非常に順調で、2020年の日系企業によるイスラエル企業への投資総額は約11億ドルで、2020年のイスラエル企業の資金調達総額の1割以上を占めているとされる。

 国境をまたぐ往来が再開した先には、イスラエル・日本間の定期直行便の就航も予定されており、今後も益々、日系企業によるイスラエルスタートアップを対象とした投資・M&Aが活発に行われることが予想される。

 本稿では、これまで多くの日系企業のイスラエル進出・投資等をサポートしてきた経験を踏まえて、主にイスラエルでの投資・M&Aにおいて検討すべき法的問題点等について概説する。


第2 イスラエルの投資実務(日米の実務との比較を踏まえて)

1.イスラエルスタートアップへの投資

 イスラエルには、防衛、通信・メディア・放送、電気事業、銀行、保険等の特定のセクターに適用される個別の法令に基づく規制はあるものの、一般的な外国投資規制はなく、外国企業は、かかる個別の法令の適用がない限りは、自由にイスラエル企業の証券を取得することができる。

 また、イスラエルの会社における株式は、日本の株式会社や米国のC-Corporationと同様に、大きく分けて普通株式(注1)と優先株式(日本でいう種類株式)に分けられる。

 両株式のラウンドごとの使い分けについて、シードラウンド以前は、普通株式で調達されることも少なくないが、それ以降のラウンドの投資においては、米国、日本の実務同様、優先株式が発行されることが多い(但し、日本においては、1億円以下の少額の資金調達について普通株式が利用される例がまだ多い(注2)。)。普通株式が特段の権利等が付されないシンプルな株式である一方、優先株式については(設計の自由度に違いはあるものの、)様々な設計が可能である点も日本、米国と共通する。

2 イスラエル投資に係る典型書面(及びその特徴)

 イスラエルでは、

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