[M&A戦略と法務]

2014年4月号 234号

(2014/03/15)

学校法人を対象とするM&A ~理事の交替の手法を中心に

 渡辺 伸行(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

1. 学校法人を対象とするM&A

  少子化や競争激化による入学者数の減少など、学校法人をめぐる経営環境は厳しさを増している。業績悪化等を理由として倒産手続に至った学校法人も散見され(注1)、他方では、入学者数の確保・増加を目的とした学校法人同士の統合・再編の動きも目立ってきている。また、医療法人や特定非営利活動法人(NPO法人)など学校法人以外の法人や企業が優秀な人材を自前で養成したりいわゆる教育ビジネスに乗り出したりするために、学校法人を設立・取得する動きもある。

  このような学校法人の統合・再編、経営主体の変更などは、「学校法人を対象とするM&A」として捉えることができる。学校法人がM&Aの対象になる契機とその場合に採られる手法は、おおむね以下のように整理できるだろう。

(1)  学校法人間の垂直的統合:主に大学が高校・中学校等を付属(附属)校・系列校化するものであり、合併や設置者変更によって行われるほか、学校法人間が提携契約を締結することによっても行われる場合がある(注2)。
(2)  学校法人間の水平的統合:主に大学が学部増設のために他の学校を統合する場合であり、合併や設置者変更の方法によって行われる(注3)。
(3)  非学校法人の学校法人化:例えば、構造改革特別区域法に基づき株式会社により設置された学校の設置者を新設又は既存の学校法人に変更する場合である(注4)。学校法人化により、私学助成や税法上の優遇措置などが得られるメリットもある。
(4)  非学校法人による学校法人の取得:例えば、医療法人、宗教法人、NPO法人あるいは個人・民間企業など、学校法人以外の者が学校経営に参画するために既存の学校法人を取得する場合であり、理事の交替の手法によって行われる。
(5)  学校法人の私的整理・倒産:経営破綻した学校法人が設置学校を存続させるために、スポンサーによる協力を得て救済的な合併・設置者変更・理事の交替を行う場合がある。
 

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