[【小説】経営統合の葛藤と成功戦略]
2014年4月号 234号
(2014/03/15)
山岡ファイナンスサービス社と渋沢ファイナンスコーポレーション社は、経営統合を数カ月後に迎えようとしていた。そんな中で、渋沢FC社の社長であり統合新会社の社長就任が決まっていた飯塚良に、末期癌が見つかった。
突然の事態に多くの関係者が戸惑う中で、山岡FS社の親会社である商社幹部は、社長ポストの奪還の好機ととらえ浮足立っていた。しかし山岡FS社の野澤博人社長はそのような親会社の思惑を一蹴し、経営トップ同士で新会社の行く末を腹を割って話をすべく、海外での商談を打ち切って緊急帰国しようとしていた。
空港への迎え
秘書室長と共に社用車で成田空港に向かった松尾は、道中ずっと無言であった。状況を知る数少ない一人である秘書室長も、松尾に何か話しかけることはなかった。
空港に到着すると、松尾は野澤博人社長の到着便に遅延がないことを確認した。予定通り15分後に着陸する。成田の到着ロビーは、意外なほど閑散としていた。ベンチソファに座っている人は誰もおらず、到着便のアナウンスだけが無機質に響いているだけだ。腰の後ろに手を組んだ警備員が、時折退屈そうに松尾らに目を向けていた。天井の高いロビーには、ガラスの壁から午後の陽光が存分に差し込まれ、松尾の心情とは裏腹に眩しいほどであった。
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――4月1日「オリックス・クレジット」から「ドコモ・ファイナンス」に社名変更
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