[ポストM&A戦略]
2016年5月号 259号
(2016/04/15)
買収後の統合の最終的な絵姿、すなわち「シナジー追求組織」がどのようなものであるかについては、デューデリジェンス開始前の段階で骨太の仮説が形成される必要がある。統合パターンの選択が、なぜ買うか、いくらで買うかということと深く関係するからである。
ここで、「わからないことについて、今決めてしまうことはできない」と、将来の意思決定に対して、一定程度柔軟に臨むことができればよい。しかし、例えば自らの仮説についての確信が強い場合(裏を返せば、わかっていないかもしれないことについての感度が低い場合)、あるいはあるべき姿について社内外から強い期待(制約)を受け、もはやストーリーの変更ができない場合などでは、クロージング後できるだけ速やかに、当初仮説に従って統合の阻害要因を詰め、課題を克服し、予定通り、定められたシナジー追求組織への再編を実施することになる。
もとより、どのような経営判断も「やり切れば勝ち、やり切れなければ負け」なのであり、絶対的な真理を探究する自然科学とはその立ち位置を大いに異にする。しかしそれでも経営は、より良い結果を担保するために、相対的に勝ち目が高い選択をしなければならない。もし、一旦生み出された組織的なイナーシャ(勢い、慣性)の修正が難しいならば、買い手は、経営リスクとなる可能性の高いイナーシャを生まないように当初仮説を適切に描き、未定とすべきところは未定としておかなければならないだろう。
今回は、このようなリスク管理の観点から、統合組織の選択に求められる着眼点を解説する。
マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。
[データを読む]