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[地域金融機関に聞く「M&Aによる地域活性化の現場」]

(2020/02/19)

【第11回】伊予銀行 コンサルティング営業部

聞き手:日本政策投資銀行 企業戦略部
                         
 地域金融機関に聞く「M&Aによる地域活性化の現場」。第11回では、伊予銀行を訪問し、コンサルティング営業部の河﨑徳彦(かわさき のりひこ)部長、同M&A/事業承継チームの西本奏太(にしもと そうた)課長、石川哲也(いしかわ てつや)担当課長にお話を伺いました。

 愛媛県を中心に瀬戸内海を囲む四国、近畿、山陽、福岡および大分などを主要な事業基盤とする伊予銀行では、『潤いと活力ある地域の明日を創る』という企業理念のもと、地域の総合金融機関として、持続可能な活力ある地域社会の実現に向けてさまざまな取り組みが進められています。こうした中、伊予銀行におけるM&Aアドバイザリー業務は、地域の事業承継等への対応を目的に業務が開始された後、近年の事業承継ニーズの高まりもあいまって業務体制の強化が進められています。
1.M&A業務の戦略的・組織的位置づけ

 1878年(明治11年)に第二十九国立銀行として創業した伊予銀行は、2018年に創業140周年を迎えました。同行の2018年度中期経営計画『Second Stage for 150』(2018年4月~2021年3月)では、「Digital-Human-Digital Bank」という新たなビジネスモデルを目指すこととし、「瀬戸内圏域お客さま満足度No.1の金融サービスグループ」となるべく、さまざまな施策が展開されています。

 伊予銀行の新たなビジネスモデルであるDigital-Human-Digital Bankとは、①デジタルを活用した日々コンタクトできる顧客接点を整備し(Digital touch point)、②グループ行員・職員が顧客からの相談に対する適時適切な情報提供・助言や顧客本位の提案を実施し(Human consulting)、③時間や場所を問わないチャネルや顧客と継続的に繋がるデジタルを活用した仕組み(Digital operation)を通じて金融サービスを展開していくことであり、事業承継・M&Aアドバイザリー業務は、「Human consulting」を推進していく上での重要な役割のひとつとして位置づけられています。

 「事業構造上、資金利益が収益の大半であり、そこが中心であることは今後も変わらないと思いますが、そうした中で、地域金融機関としてしっかりと金融仲介機能を果たしていくことが重要です。『Digital-Human-Digital Bank』という弊行が目指す姿において、『Human』の部分は、営業店とコンサルティング営業部が中心的に担っていくことになりますが、お客さま本位というスタンスに立ちながら、いかにお客さまの課題解決に向けた提案やサービスを提供できるかだと考えています。その中でも事業承継・M&Aアドバイザリー業務は、地域企業の持続的成長を支援していくもので、地域金融機関としてコア業務であると考えております。こうした活動を通じてお客さまから支持・評価をいただき、その結果として手数料収益にも繋がります」(河﨑部長)

 なお、伊予銀行の中期経営計画では、「知る営業」という取り組み方法がフォーカスされていますが、「お客さまのお役に立つためには、より良いコミュニケーションを通じてお客さまとのリレーションを作り、そうした中でソリューションを提供していくことが基本だと考えています。コミュニケーションに関しては、お客さまの思いを伺いながらお客さまを理解することがスタートです。そのため弊行では、事業性評価を通じて経営者や従業員、業界、企業及び経営戦略を知り、そこから銀行としてお役に立てることは何なのかを模索していくことを『知る営業』とし、行内で共通利用している事業性評価シートの様式のほか、お客さまの課題解決に向けた施策の進捗状況がシステムで把握できるよう、様々な工夫を行っています」(河﨑部長)

 「事業性評価において、『どうしたらお役に立てるか』を考えていく仕組みとして、事業性評価検討会という営業店、コンサルティング営業部及び審査部等の本部関連部署で議論する場が毎月開催されており、毎月約30社について検討が行われています。これまでに1,000社以上についての検討を積み重ねてきており、検討会で出されたお客さまの課題に基づき、営業店とコンサルティング営業部等が連携しながらお客さまとのコミュニケーションや提案活動を展開しています」(河﨑部長)とのことであり、銀行全体で連携しながら、幅広い顧客層に対してニーズ把握から課題解決策の提案まで行い、かつその実行をフォローしていく体制が構築されています。

コンサルティング営業部 体制図



 組織面について、営業店と連携してソリューション提供を行っているのが、河﨑部長率いる総勢129名のコンサルティング営業部です。コンサルティング営業部では、M&A・事業承継支援のほか、ファイナンスアレンジ、ビジネスマッチング、ものづくり支援、事業性評価支援、信託、預り資産及び保険など多岐にわたるコンサルティング業務やソリューションビジネスを展開しています。従前は個人向けのリテール推進部と法人向けのソリューション営業部に分かれていましたが、2018年8月に現在の体制に組織改正が行われ、法人・個人を一体的に取り組んで行く体制となっています。

 西本課長が統括するM&A/事業承継チームは、7名(うち1名は外部のM&Aアドバイザリーファームに出向中)のM&Aチームと、9名の事業承継チームで構成されています。同行では、2000年頃に職員が受講した地銀協の研修がきっかけでM&A業務の企画が検討され、FP(フィナンシャルプランナー)業務の一部としてM&A支援の取り組みも行われるようになりました。その後、2009年度に2名体制(いずれも他業務との兼務)で事業承継業務をスタートし、2014年度にM&Aチーム、更に2015年度には事業承継チームという形で専門組織化されて以降、近年ではその体制強化が進められています。

2.M&A業務の体制

(1)業務体制

 総勢16名のM&A/事業承継チームのうち、事業承継チームは各担当者が同行の営業エリアをそれぞれカバーしており、営業店と連携しながら担当エリアにおける企業の親族内承継へのコンサルティングサービスを提供しています。一方のM&Aチームは、石川担当課長を含めた6名の担当者が、営業店や事業承継チームから寄せられるM&Aニーズ、外部承継ニーズを収集し、マッチメイキング~エクゼキューションを担当しています。

 M&Aチームについては、2014年に3名体制で立ち上げられた後、現在の体制まで拡充されていますが、アドバイザリー業務経験では、チームの立ち上げ前からM&Aを担当してきた石川担当課長が10年間の業務経験を有しているほか、その他の立ち上げメンバー2名(うち1名は弁護士資格保有者)が業務経験5年という状況にあり、立ち上げメンバーが中核となり業務展開されています。

 また、現在出向中の1名を含め、M&Aチームの全員が金融機関やM&Aブティック、投資ファンドなどへの出向経験者ですが、この点については、「M&Aアドバイザリー業務は専門性が高く、ノウハウも簡単に身につくものではないことから、外部機関への出向を通じた研修を経験させています。なお、営業店等からの異動で直接外部派遣するのではなく、半年から1年程度はM&Aチームで業務に触れた上で、外部派遣を行っています」(西本課長)とのことであり、スキルやノウハウの習得がより効果的に進むよう、戦略的な人事政策が採用されています。

(2)案件状況と営業推進体制

 伊予銀行のM&Aアドバイザリーは仲介業務(全体の約8割~9割程度が仲介)が中心であり、アドバイザリー契約件数は2015年度の9件から、2016年度26件、2017年度19件、2018年度33件と、その取り組み規模を拡大させています。また、成約件数(仲介案件は2件とカウント)についても、2015年度の15件から、2016年度13件、2017年度20件、2018年度20件と順調に成果を積み重ねてきており、2014年度のチーム立ち上げ後、体制の充実とともに、実績を拡大しつつあります。

 M&A情報については、各営業店から寄せられる事業承継ニーズが中心となっていますが、ここ数年で営業店の行員の取り組み意識が高まっていることを実感しているようで、「行内での勉強会や研修などを通じて啓蒙活動を行ってきた結果、M&Aや事業承継への対応がコアな銀行業務として行内でも認識されるようになった」(河﨑部長)とのことであり、この他にも「M&Aアドバイザリーのみならず、お客さまに対して優れたソリューションを提供できた事例については『ベストソリューション』として行内のイントラネットで紹介する仕組みが構築されており、M&A案件が成約した場合も好事例として行内で共有されているほか、支店長の研修テーマにもM&Aが組み込まれている」(河﨑部長)など、地道かつ着実な取り組みの継続が「いかにお役に立てるか」という意識を全行的に浸透させ、その結果としてM&A案件の発掘にも繋がっているようです。

 なお、「最近は、案件相談の件数が増加しているだけではなく、それぞれの案件の手数料水準も徐々に上がってきている状況」(石川担当課長)とのことであり、営業店と連携したオリジネーションが手数料収益にも結びついています。この結果、2014年度のM&Aチーム立ち上げ以降、手数料収益は一貫して増収を継続しており、2019年度についても前年度を上回る見通しです。

 また、以前は営業店への業績表彰の枠組みの中で、M&A情報の提供に対してポイントが付与されていましたが、「現在はそのような業績表彰制度は廃止されており、業務目標はそれぞれの営業店等が担当エリアやお客さまを取り巻く環境を踏まえ、自ら設定する仕組みに変更されている」(河﨑部長)ということで、目標設定においても各現場が「いかにお役に立てるか」を自ら考え、それを独自目標に落とし込んでいく形が導入されています。

 このほか、伊予銀行では、2016年から多忙な経営者向けに愛媛県内でテレビCMを放映しており、案件ソーシングに向けた独自の施策も展開されています。

 こうした活動を通じて寄せられた譲渡ニーズについては、愛媛県内の買い手とマッチングさせることを最優先に行内で買い手探索が行われますが、行内でのマッチングが難しい場合には、外部ネットワーク先との情報交換を通じてマッチングが図られています。外部のネットワーク先としては事業承継関連のM&A仲介事業者のほか、「四国アライアンス(伊予銀行のほか、百十四銀行、四国銀行、阿波銀行)」、「9行連携(伊予銀行のほか、北海道銀行、七十七銀行、八十二銀行、千葉銀行、静岡銀行、京都銀行、広島銀行、福岡銀行)」、「TSUBASAアライアンス(伊予銀行のほか、北洋銀行、東邦銀行、第四銀行、北越銀行、武蔵野銀行、千葉銀行、滋賀銀行、中国銀行)」といった幅広い広域連携体制を構築しており、こうした地銀連携の取り組みの中からの成約実績も出始めています。
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