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[対談・座談会]

2019年4月号 294号

(2019/03/15)

[座談会]中小企業の事業承継・再生支援とPEファンドの役割

【出席者】(五十音順)
阿南 雅哉(京都銀行 専務取締役)
安東 泰志(ニューホライズン キャピタル 代表取締役会長)(司会)
西内 幸男(独立行政法人 中小企業基盤整備機構 ファンド事業部部長)
左から安東 泰志氏、阿南 雅哉氏、西内 幸男氏
左から安東 泰志氏、阿南 雅哉氏、西内 幸男氏
<目次>
現場から見た中小企業の経営環境
地域金融機関としての対応
事業引継ぎ支援センターの相談内容をデータベース化してマッチング
PEファンドの活用に対する中小企業経営者の認識
地方金融機関による事業再生支援の実態
再生支援協議会全国本部の役割
企業の資本政策のアドバイス役としての銀行の役割
リスクマネー還流の重要性
現場から見た中小企業の経営環境

―― 地域経済の活性化が叫ばれながら、中小企業の労働生産性が低迷しています。その原因として経営者層の高齢化による事業承継問題という大きな課題があります。地域金融機関もM&A支援などの対応を強化しつつあり、政府も2018年の事業承継税制の改正で、相続税や贈与税の支払いを猶予するなどの時限的な支援措置を講じています。こうした中で、プライベート・エクイティ(PE)ファンドによる支援が注目されるようになっています。PEファンドが提供する資本性の資金と銀行借り入れの併用や、PEファンドによる人材、経営改革などによって、生産性が上がり事業の再生が期待されています。そこで、本特集では中小企業の事業承継、企業再生において、地域金融機関と民間のPEファンドの協力関係について、京都銀行の阿南雅哉専務取締役、独立行政法人中小企業基盤整備機構から西内幸男ファンド事業部部長、そしてニューホライズン キャピタルの安東泰志代表取締役会長にご出席いただき、中小企業の事業承継・再生の現状と課題、またPEファンドの役割についてについて議論していただくことにしました。司会兼コメンテイターを安東会長にお願いしております。よろしくお願いいたします」

安東 「昨年後半から、米中貿易摩擦などの不安定要因が加わり、為替や株式の相場も大きく変動するなど、中小企業を巡る環境はますます不透明感が増しているように感じます。こうした中、大きく2つの観点から、中小企業支援政策を推進されている立場から中小企業基盤整備機構の西内ファンド事業部部長、地域金融の現場で中小企業経営を支援しておられる立場から京都銀行の阿南専務にご見解をお伺いします。

 2つの観点の1つは、事業承継問題。もう1つは、事業再生の支援をどうするかという問題です。17年に施行された『地域未来投資促進法』では、主な支援措置の1つとして地域経済活性化支援機構や中小企業基盤整備機構などによるファンド創設・活用がうたわれており、これら機構による民間投資ファンドへの投資も進んでいます。そういったところにも焦点を当てお話しいただければと考えています。

 そこで、まず、中小企業の業況について西内部長からお願いします」

西内 「中小企業庁及び中小機構では、中小企業の景気動向を総合的に把握することを目的に、『中小企業景況調査』を実施しています。約80%を小規模企業が占める日本の中小企業構造の実態を踏まえた唯一の調査で、商工会議所、商工会、中小企業団体中央会により任意抽出した約1万9000社の中小企業(金融機関を除く全業種)を対象に、業況判断・売上高・経常利益等のDI値※を、四半期毎に産業別・地域別等に算出する景気動向調査となっていまして、経営者へのヒアリングをベースに算出しています。

西内 幸男(にしうち・ゆきお)

西内 幸男(にしうち・ゆきお)

1978年中小企業共済事業団(現:中小機構)入社。86年中小企業診断士登録。2003年再生支援推進課長(再生ファンド創設のチームリーダーに就任)、04年再生支援課長、06年中小機構中国支部(現:中国本部)企画調整部長、08年人事グループ審議役、11年ファンド事業部長(現在に至る)

 これによりますと、中小企業の業況は、一部業種に一服感が見られるものの、基調としては、緩やかに改善しているという状況です。具体的には、18年10~12月期の全産業の業況判断DIは3期ぶりに上昇しました。製造業の業況判断DIは2期ぶりに上昇していまして、業種別に見ると、鉄鋼・非鉄金属、電気・情報通信機械器具・電子部品、家具・装備品、繊維工業など8業種で上昇し、パルプ・紙・紙加工品、木材・木製品、食料品など6業種で低下しているという状態です。非製造業の業況判断DIも3期ぶりに上昇しました。産業別に見ると、建設業、小売業、卸売業、サービス業でいずれも上昇しています。

 ある金属メーカーの経営者は、操業率も最大の状態がずっと続いていて、引き合いも多く、できない分は条件の悪いものから断っている状態だと答えています。ただ、従業員を増やすのは抵抗があり難しい状況だということです。

 一方、懸念材料もあって、欧州連合からの英国の脱退や米中の貿易戦争の行方が不透明な点で、今後いつの段階でリセッションがくるのかが一番気になるところだと思います」

阿南 雅哉(あなみ・まさや)

阿南 雅哉(あなみ・まさや)

1985年京都銀行入行。東向日町支店長、本店営業部第二部長、法人部長を経て、2012年取締役(法人部長委嘱)、2013年取締役(営業支援部長委嘱)、2015年常務取締役、2017年より現職(営業本部長委嘱)。

※DI(ディフュージョン・インデックス):前年同期比または前期比で、「好転」と回答した企業比率から「悪化」と回答した企業比率を引いた数値。

安東 「銀行業の立場から、日ごろから地元企業、支援や再生支援等に取り組まれておられる阿南専務はどのように見ておられますか」

阿南 「当行も定期的にお客様にアンケートをお願いし、景況調査を行っております。直近(2018年11月調査)では、自然災害による影響などで若干マイナスと受け止める業種もあるものの、全体的には底堅く推移しているというのが実感です。地元企業では人手不足から外国人実習生の受け入れを行うところがある一方で、大手企業が米中貿易摩擦の影響で業績予想の下方修正を発表するなど、中国における大手企業の生産が減少となると、地元の中小企業に与える影響も小さくないとみています。また、直近の動きを見ても、減少基調にあった倒産動向も少し変化が見られるなど、西内部長も言われたようにリセッションについての不安感はたしかにあります」


地域金融機関としての対応

安東 泰志(あんどう・やすし)

安東 泰志(あんどう・やすし)

1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がける。1994年、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ(私的整理ガイドライン、INSOLの前身)ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。その後、東京三菱銀行企画部で企画部門の次長を歴任後、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。国内機関投資家の出資による8本(総額約2600億円)の投資ファンドを組成、市田・近商ストア・東急建設・不動建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア、日立ハウステック、たち吉など、流通・建設・製造業に亘る数多くの企業の再生と成長を手掛ける。東京大学経済学部卒業・シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。 事業再生実務家協会理事、日本取締役協会監事。

安東 「中小企業の経営者の年齢分布で最も多い層は過去20年で47歳から66歳へと約20歳も高齢化しています。現状を放置すると、25年までの10年間の累計で約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われるとされています。政府も先代経営者から後継者に株式を相続または譲渡・贈与する場合は一定の条件を満たせば、相続税や贈与税の支払いを猶予するなどの時限的な支援措置を講じています(18年の事業承継税制の改正)が、現場の地域金融機関として阿南専務はどのような対応をされておられますか。チーム編成も含めて具体的にお話しいただければと思います」

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