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(2022/07/01)

三井松島ホールディングス ~「安定収益、ニッチ市場、分かりやすい」を方針とするM&Aによって自己変革を推進

澤田 英之(レコフ 企画管理部 リサーチ担当)
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1.M&Aにより非石炭事業を拡大

 三井松島ホールディングス(以下「三井松島HD」)は1913年に長崎県に設立された松島炭鉱という石炭採掘会社を前身とする。株式上場は1961年であり、その後、1983年に三井鉱山建材販売を吸収合併し「三井松島産業」に商号を変更。2018年には持株会社体制移行に伴い商号を「三井松島HD」に変更した。

 国内の石炭生産量は、1960年代には石油への転換、そして1980年代以降は割安な輸入炭の影響を受けて減少した。同社は2001年に国内石炭生産事業を終了。一方、海外では1991年にオーストラリアのリデル炭鉱に資本参加し対日販売権を取得した。リデル炭鉱はスイス資源大手のグレンコアとの共同運営であり、グレンコアが67.5%、三井松島オーストラリア(三井松島HDの豪子会社)が32.5%の権益を保有している。ただ、豪州リデル炭鉱については、州政府から許認可を得ている採掘エリアが2024年3月期中に終掘予定である。隣接地域への鉱区延長が豪州当局から認可された場合、三井松島HDは経済合理性等に鑑み権益維持、権益部分売却、全権益売却といった選択肢から決定する方針だ。

 国内の石炭生産量が減少する中、三井松島HDは従来から経営の多角化を進めてきたが、これが大きく進展したのは現代表取締役社長の吉岡泰士氏が2013年に同社に入社してからである。吉岡社長はJ.P.モルガン証券会社東京支店、デロイトトーマツFAS、GCA(現フーリハン・ローキー)などでM&Aアドバイザーとしての経験を積んだ。三井松島HDには海外業務部部長兼経営企画部部長として入社し、2020年に代表取締役社長に就任した。

 図表1は三井松島HDが2014年以降に買収した企業である。同社は「安定収益、ニッチ市場、分かりやすい」をM&Aの方針に掲げており、買収した企業は各社ともニッチな市場で高いステイタスを有する非石炭分野の製造業である。

 三井松島HDによると、買収後は同社による会計・税務、法務、人事、内部統制などに関わる親会社としての支援の他、子会社間での技術及び人材交流、部材供給、生産管理ノウハウの共有といったシナジーが発生。2021年3月期時点での7件のM&Aによる投資収益率(年間EBITDA÷投資総額)は約18%という。

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