[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2023年12月号 350号

(2023/11/10)

【マネックスグループ 清明祐子CEOが語る】NTTドコモをパートナーに描く成長戦略

――NTTドコモの連結子会社化が意味するもの

  • A,B,EXコース
清明祐子 マネックスグループ 取締役兼代表執行役社長CEO、マネックス証券 代表取締役社長

清明祐子 マネックスグループ 取締役兼代表執行役社長CEO、マネックス証券 代表取締役社長

成長のための欠けた“ピース”を獲得する

 マネックスグループ、マネックス証券およびNTTドコモ(以下ドコモ)は2023年10月、3社間で資本業務提携契約を締結した。

 クロージングは、2024年1月4日を予定しており、資本業務提携は以下の手順で行われる。

 ①マネックス証券が、株式移転の方法により中間持株会社を設立し、マネックス証券の発行済株式の全部を中間持株会社が取得。②マネックスグループが、中間持株会社の普通株式の一部をドコモに譲渡(約466億円)し、また、中間持株会社は、同時にドコモを割当先として中間持株会社の普通株式を発行。①および②の結果、中間持株会社の議決権所有割合は、マネックスグループが50.95%、ドコモが49.05%となり、ドコモおよびマネックスグループが協力して中間持株会社を通じてマネックス証券の運営にあたる。なお、ドコモが中間持株会社の株式および議決権割合の約49%を保有し、取締役の過半数を指名する権利を有することなどから、実質支配力基準に基づいて、中間持株会社と完全子会社であるマネックス証券はドコモの連結子会社となる。

 2024年1月4日のクロージング以降の中間持株会社名称は「ドコモマネックスホールディングス」で、マネックス証券の社名は変わらず、現在の代表取締役社長である清明祐子氏が引き続きマネックス証券の社長を務める。

ストラクチャー
出所:マネックスグループのリリース

 ネット証券業界は、口座数ではSBI証券(約1046万口座。2023年6月)がトップ、以下、楽天証券(約924万口座。同)、マネックス証券(約223万口座、2023年9月)、auカブコム証券(約160万口座。同)、松井証券(約146万口座。2023年6月)などが続き、し烈な競争が繰り広げられている。こうした中、2024年1月から非課税保有期間の無期限化、口座開設期間の恒久化、年間投資枠の拡大などを盛り込んだ新NISA(新しい小額投資非課税制度)がスタートする。これに対応して、SBI証券と楽天証券が国内株式の取引手数料の無料化を発表、SBI証券は2023年9月30日から、楽天証券は同10月1日から導入して顧客の囲い込みの強化に動いている。ライバル他社の攻勢を受けて、マネックス証券としても新たな成長戦略を模索していた。

 一方、ドコモは2022年7月1日にエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ、エヌ・ティ・ティ・コムウェアを経営統合、新たに社内カンパニー制を導入して非通信領域を担う「スマートライフカンパニー」を発足させた。これによって、他社と比べて出遅れていた非通信事業の2025年度売上高を、2021年度実績の倍増に相当する2兆円規模へと拡大させる方針を打ち出した。

 非通信事業については、ソフトバンクがスマホ決済サービス「PayPay」を軸にPayPayカードやPayPay銀行、PayPay証券など、着々と「PayPay経済圏」を築きつつある。また、KDDIも、auじぶん銀行、auカブコム証券、auフィナンシャルパートナー、au損害保険などの会社を傘下に収めた「auフィナンシャルホールディングス」を設立して、クレジットカードや銀行、証券などの口座保有でポイント還元や円普通預金の金利優遇などを提供する新料金プラン「auマネ活プラン」をスタートさせている。ライバル各社が証券事業によって新NISAスタートを機にユーザーの囲い込みに動く中で、ドコモとしても非通信領域の強化は至上命題となっていた。

 マネックス証券とドコモの両社は、2020年から「マネックスポイント」を「dポイント」に交換できるポイントプログラムで連携するという接点を持っていた。国が新NISAによって貯蓄から投資へと軸足を移す施策を取る中で、非通信領域の売上高を倍増させようというドコモと、ドコモが持つ9600万人に上る顧客基盤に新たな成長の機会を見出したマネックス証券が、資本業務提携という踏み込んだパートナーシップを結んだのは、お互いの成長戦略上の欠けた“ピース”を獲得するための必然的な行動だったと言える。

 ドコモとの資本業務提携を主導した清明祐子・マネックスグループ取締役兼代表執行役社長CEO、マネックス証券 代表取締役社長に、資本業務提携の狙いと今後の成長戦略について聞いた。

<インタビュー>
9600万人の「ドコモ経済圏」がもたらす飛躍的な成長

 清明 祐子(マネックスグループ 取締役兼代表執行役社長CEO、マネックス証券 代表取締役社長)

<目次>
  • マネックス証券の執行体制は基本的には変わらない
  • 良いM&Aの条件
  • なぜ、ドコモの子会社になったのか
  • 売買手数料無料化の流れには与しない
  • 基幹システムの内製化が強み
  • 「ドコモ経済圏」の魅力

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

関連記事

バックナンバー

おすすめ記事