[Webインタビュー]

(2014/02/26)

【第34回】M&Aプレーヤーを目指す若者たちへ

 植田 兼司(いわかぜキャピタル 代表取締役CEO)
  • A,B,C,EXコース



3年間全力疾走しろ

―― 植田さんはこのほど、『一流の決断力――伝説のディール・メーカーが教える「粘る力」と「割り切る技術」』(日本能率協会マネジメントセンター刊)を上梓されました。大学卒業後、東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険:以下東京海上日動)に入社。その後、外資系プライベート・エクイティ(PE)ファンドであるリップルウッド・ホールディングス*(以下リップルウッド)が日本につくったリップルウッド・ジャパン(現RHJインターナショナル・ジャパン:以下RHJ)の立ち上げに参画して代表取締役を務めた後、独立して「いわかぜキャピタル」を設立して今日に至っています。

 弊社のMARR Onlineのコンテンツについては学生の関心も高く、将来はM&Aプレーヤーとしての道を目指している方も多いと推測しているのですが、今日は、M&Aについて豊富な経験をお持ちの植田さんにM&Aプレーヤーを目指す学生やビジネスマンにアドバイスをいただければと思います。

 植田さんは東洋大学や法政大学で教鞭を取った経験もお持ちですが、学生や新入社員にはどのようなアドバイスをしておられましたか。

 「大学では、国際金融リスク管理論を教えていたのですが、金融に限らず、脳みその柔らかいうちにしっかり勉強することによって、物の本質を見極める力をつけてほしいということを言っていました。そのためには日頃から持続力をつけることが大事です。机に向かう時間は誰でも苦痛です。いきなり長時間机に向かおうと思っても無理です。だから最初は20分。それを30分にし、30分から1時間と広げていって、勉強する習慣、考える習慣を身につけていくことが社会人になってからも必ず役に立ちます。

 また、新入社員に対しては、『3年間全力疾走しろ』と常に言っています。それぞれ分野は異なるでしょうが、3年間全力疾走する。これはもう息も継がずに仕事と勉強をしてほしい」

―― 植田さんは東京海上日動に入ったわけですが、ご自身の新入社員時代はどうでした?

 「私は22歳で現在の東京海上日動に入社し、3カ月間の研修の後、福岡支店に配属されて、海運業を中心とした企業への融資の審査を担当しました。当時課長代理だった望月一巳さんという方にそれこそ手取り足取り教えていただきながら、下関から那覇まで管轄内にある中堅企業への貸し付けに走り回りました。毎日夕方になると、同期入社の営業の連中が『飲みに行こう』と誘いに来ます。望月さんは『植田さん、行ってきていいですよ』と言ってくれるのですが、仕事はまだ山のようにあり、私だけ先に帰るわけにはいきません。彼らを横目で見ながら、企業の財務分析を望月さんから徹底的に教わりました。土曜日も夕方6時ぐらいまで特訓が続き、入社後の3年で何千社という企業の貸借対照表、損益計算書を読み込みました。夜遅くまでの仕事の後は、望月さんといつも軽く一杯、それも楽しみでした。

 日本企業ではこのように先輩に手取り足取り教えてもらえるという良さがあります。そういう先輩を利用して、自分の身体の中に貸借対照表、損益計算書を染み込ませる。パッと見て、異常値がわかるというぐらいまでやっていくことが大事ですね。別に、会計学とか簿記とかを究めるということではなく、そういう日々の実践の中で身につけて行けたことは私にとって大きな財産となりました。


 

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、Cコース会員、EXコース会員限定です

*Cコース会員の方は、最新号から過去3号分の記事をご覧いただけます

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事

アクセスランキング