[M&Aスクランブル]

(2017/07/05)

ソレキアのTOB合戦の「勝者」に課された課題

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 2017年5月24日、東証ジャスダック上場の独立系電子部品商社ソレキアを巡るTOB合戦が決着した。約4カ月に亘り繰り広げられたチキンレースの経緯は既報(注1)の通りであるが、フリージア・マクロス(東証2部)オーナーの佐々木べジ氏が1株2,800円で仕掛けたいわゆる敵対的TOBに対して、長年の重要取引先である富士通がいわゆるホワイトナイトとして1株3,500円のTOB価格で参戦。その後双方がTOB価格の引き上げ合戦を演じ、富士通が5,000円、佐々木氏が5,300円を提示したところで、富士通はTOB価格のさらなる引き上げを断念した。なお、佐々木氏は、その後市場株価が5,300円を上回って推移したことに対応して、最終的には5,450円に引き上げている。

(注1)「M&Aスクランブル[2017年2月3日] [5月24日データ追加][M&Aデータ (敵対的TOB)] フリージア・マクロスの佐々木ベジ会長、電子部品商社のソレキアにTOBを実施」参照。

 TOBの中身と結果をまとめてみると、富士通の最終的なTOB価格は5,000円で、応募株数は357,765株。買付株式数の下限445,924株に達しなかったためにTOBは不成立となった(上限は設けていない)。この下限株式数は、議決権の3分の2に相当する株数から、富士通がすでに保有している23,558株(2.8%)とソレキア創業家・役員等の非応募株主が保有する109,118株(12.5%)を控除したものであり、応募がこの下限株式数を上回れば、非応募分も加えて議決権の3分の2以上となり、2段階目のスクイーズアウトにより富士通の100%子会社(上場廃止)とする予定であった。ちなみに、実際の応募株数は議決権の41.2%、これに富士通と非応募株主分を加えた合計490,441株は56.5%に相当する。すなわち、過半数の議決権を獲得したものの、下限の3分の2には満たず不成立となったわけである。なお、応募の締切日は5月22日だった。

 佐々木氏の方であるが、最終的なTOB価格は5,450円で、応募株数は285,499株。議決権割合は33.7%で、フリージア・マクロスの保有する58,600株を加えると、344,099株、39.6%となり、3分の1を超える圧倒的筆頭株主となった。ちなみに、買付株式数の上限を364,700株と設定しており、フリージア・マクロスの保有分を含めても48.7%が上限(上場維持)であるが、実際の応募は上限株数に達しなかった。また、買付株式に下限は設けていない。なお、応募の締切日は、富士通の締切日の翌日5月23日であった。

 この顛末をTOBの成立・不成立という観点から見れば、佐々木氏の勝利、富士通の敗北ということになるのだろうが、果たしてそういう評価でよいのか。いくつかの視点から確認してみたい。

 まず、TOBに応募した「一般株主」の動向だ。関係当事者である・・・

 

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