[視点]

2013年9月号 227号

(2013/08/15)

公開買付け撤回禁止規制の改革論の視点

 飯田 秀総(神戸大学大学院法学研究科 准教授)
  • A,B,EXコース

問題の所在

  金融商品取引法第27条の11第1項は、公開買付者が、公開買付開始公告をした後に、公開買付けを撤回することを原則として禁止している。ただし、公開買付者の業務もしくは財産に関する重要な変更その他の公開買付けの目的の達成に重大な支障となる事情が生じたときは、公開買付けを撤回することが認められている(同項但書・金融商品取引法施行令14条)。
  それでは、公開買付者が、公開買付けに要する資金について、公開買付け開始後に貸し付けを受ける予定で、公開買付けを開始したが、貸し付けを受けられなくなったため、公開買付けを撤回することは認められるだろうか。
   条文上、公開買付者が貸し付けを受けられなくなったことを理由に、公開買付けを撤回することを認めるという規定は存在しない。そのため、公開買付けを撤回することは認められない、というのが現行法の下での答えとなる(注1)。
  しかし、このようなルールが妥当なのだろうか、という疑問がある。論者の中には、公開買付者が資金調達できなかった場合に公開買付けを実施させたとしても、資金調達できていない以上、最終的には債務不履行に陥り、公開買付けに応募した株主に民法上の解除権を行使させる結果になるが、株主等の便宜を考えれば、端的に公開買付けの撤回を認めた方がよいと論じる見解もある(注2)。そして、この問題については、立法的な対応が期待されると説く者もある(注3)。
   そこで、本稿では、仮に立法的な対応を行うとした場合に、考慮すべき視点を提供したい。

  

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