[視点]

2013年11月号 229号

(2013/10/15)

進展する広域FTAと直接投資政策

 浦田 秀次郎(早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科 教授)
  • A,B,EXコース

交渉が進むTPPとRCEP

  環太平洋経済連携協定(TPP)が注目を集めている。TPPは自由で開かれた貿易および投資環境を実現させることを主な目的として、アジア太平洋経済協力会議(APEC)のメンバーであるシンガポール、ニュージーランド、チリおよびブルネイにより2006年に設立された自由貿易協定(FTA)である。10年3月には、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナムが参加して拡大TPP交渉が開始され、その後、マレーシア、カナダ、メキシコ、および日本が加わり、現在、本年末までの合意を目標として、12カ国で交渉が進められている。

  TPP交渉が進展する中、東アジア諸国を加盟国とする東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉が本年5月に開始された。RCEP交渉は2015年末までの合意を目標として、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国により進められている。RCEPにおいてもTPP同様に、貿易と投資の自由化および円滑化が重要な目標となっている。

  TPP交渉には中国が不参加である一方、RCEPには米国が不参加であること、また、TPPは労働や環境など中国などの発展途上国にとっては受け入れることが難しい制度の構築が追求されていることなどから、TPPとRCEPは対立する枠組みであるという見方もあるが、両枠組み共に現在交渉中であることから、両者の関係については、現時点では、断定することはできない。

  TPP交渉においては情報統制が厳しいことから、交渉内容についての正確な情報の入手は難しいが、投資に関しては、外国企業による投資に対する内国民待遇、技術移転要求など操業に関する規制の撤廃などの投資政策の自由化、投資の保護、健康や環境の保護などの公共の利益のための規制、投資家と国家の間の紛争解決手続き(ISDS)などが主要な争点になっているようである。RCEP交渉は始まったばかりであることから、交渉の具体的な内容については、固まっていないようであるが、投資に関する争点はTPPと同じようなものになる可能性が高い。以下では、TPPなどの国際協定における投資政策に関する議論を踏まえながら、アジア太平洋における持続可能かつ公平な経済成長を可能にするような投資政策を考えてみたい。

  

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