[視点]

2014年1月号 231号

(2013/12/15)

小規模企業の活性化に向けた信用組合の取り組みと今後の展望

 内藤 純一(全国信用協同組合連合会<全信組連> 理事長)
  • A,B,EXコース

  全国に156ある信用組合の現状把握に努めている。現職に就いてからすでに二年半、東京の仕事の合間を縫って全国各地の信組訪問を繰り返すなか、信組の理事長をはじめ役職員の方々との話し合いから得られた営業現場の知識・情報は、私自身の思考を整理し、発展させるうえで大いに役立つものになっている。

  本稿ではタイトルの通り、信組の主な取引先である小規模企業の現状やその活性化に向けた信組の取り組みなどにふれながら、日々、創開業や企業の再生あるいは再構築などに携わっておられる経営アドバイザーの方々、その他金融界、経済界の一般読者の方々に、私が考えている信組業界の現場の問題点を知って頂いたうえで、今後の改善に向けた方策について、むしろ読者の皆様方からご示唆を賜れば、という思いで筆を執った次第である。

信用組合の経営基盤

  信用組合とは、元来、銀行などから容易にお金を借りることのできない地域の中小零細商工業者や医師、歯科医師などの同業者、同じ職場、職域に生きる生活者などがその構成員(組合員)となって、各種コミュニティーのなかで生きる人と人との絆を基盤に設立された、相互扶助の協同組織金融機関である。したがって、信組の組合員(法人と個人)は出資者であると同時に預金者であり、また、資金を借り受ける顧客でもあるという、いわば三つの顔を持つ存在として理解できる。因みに、信組の組合員はこれまで増加の一途をたどり、今や全国で384万人(平成25年3月末)に達している。

  ひとくちに小規模な中小零細事業者といっても、その定義は大企業、中小企業のそれと同様、結構区々だ。とはいえ、最もポピュラーな中小企業庁のそれ(注)によれば、全国の企業数が全体で421万社。そのうち、大企業が0.3%で中小企業は99.7%。小規模企業はこの中小企業全体の約9割、約366万社とされ、数ではまさに他を圧するものとなっている(平成21年)。

  (注)中小企業庁による小規模企業の定義によれば、製造業などで従業員20人以下、卸・小売、サービス業で5人以下の企業とされる。

  この小規模企業が地域における信組の最も重要な顧客層であることはいうまでもない。かつて、資金需要が旺盛で金融機関によるオーバーローンが常態化していた時代に、銀行や大手信金などから簡単にお金を借りることができなかった人たちが集まって信組を創ったことは、すでに述べた通りだ。

  現在、信組が実際に取引する企業数は別の統計によれば約20万企業とされる。類似の協同組織金融機関である信用金庫は一般に、信組より少し大きめの中小企業ないし小規模企業との取引が中心と見られ、たとえば、一企業当たりの平均融資残高は信組で2987万円、信金で3576万円となっている。

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