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[寄稿・寄稿フォーラム]

2021年6月号 320号

(2021/05/19)

一歩進んだ再建局面におけるM&A~私的整理・法的整理におけるM&Aのポイント~

石田 渉(森・濱田松本法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士)
【サマリー】

1. はじめに(本稿の目的)
財務の抜本的改善を目指す私的整理法的整理手続について、手続の概要を説明し、売り手・買い手双方の立場からM&Aの要点を解説

2. 一歩進んだ事業再建手法としての私的整理手続と法的整理手続
(1) 近時の傾向
今日の実務では、事業再建策の一次手法として私的整理手続が定着
しかし、コロナ禍により過大な固定費に苦しんでいる企業にとっては、不採算の契約関係の解除等によるPL改善効果が期待できる法的整理手続も有効な手法となり得る
(2) 私的整理の概要
債権者と債務者の私的な協議により、全ての対象債権者(金融機関)の合意の下で債務(金融機関からの借入)の削減を行う
メリットは、原則非公開の手続ゆえ、事業価値や信用力の毀損を最小化できる点、債務整理の対象債権者の選択が可能である点、商取引債権者が対象外である点など
(3) 法的整理の概要
民事再生会社更生法で定められた一定数の債権者の同意により、債務の削減が可能となる。対象債権者は、私的整理(原則、金融債権者に限定)とは異なり、債権放棄等に反対した債権者や一般商取引債権者を含む全債権者となる
申立の事実が必ず公になってしまうため事業価値毀損のリスクが大きく、事前のスポンサー探索・確保等による信用補完がポイント

3. 私的整理・法的整理手続下におけるM&Aの特色
(1) 私的整理におけるM&Aの特色
収益ベースのバリュエーションのみでは十分な事業価値を算出しにくいことに加え、M&Aの対価を金融機関への返済原資に充てることが想定されるため、買い手としては、「担保設定状況を含め、金融機関を納得させるために最低いくら必要なのか」という視点がポイントとなる。
債務者(M&Aの売り手)としてはスケジュール内にて買い手(スポンサー)の探索・合意が必要
(2) 法的整理におけるM&Aの特色~迅速な信用補完の必要性~
信用補完のため、できる限り迅速なM&Aの実行、さらには支援スポンサーの早期確保・公表(意見表明)が極めて重要。プレパッケージ型M&Aも有効な手法となり得る

4. さいごに


1. はじめに

 新型コロナウイルス(以下「新型コロナ」という。)流行から1年以上が経過した。新型コロナ流行拡大以降の1年間を振り返ると、政府や政府系金融機関による各種助成金・緊急融資により企業の資金繰りが下支えされ、資金破綻に陥る企業が続出する事態は今のところは回避されたといえる。また、新型コロナにより多くの業態で事業環境が激変し、需要減少による売上減や固定費の過大化等に対応するため、多くの企業が事業・組織体の再構築(事業転換に伴う雇用調整、賃貸借契約や各種取引契約の見直し等)に着手し、中長期的にみて事業継続に懸念が生じている事業の売却を検討する場面も増加してきた。

 他方、上記のような事業・組織体の再構築は相手(従業員・契約の相手方)の協力・同意を得る必要があることから抜本的改革へのハードルは高く、また、依然として新型コロナ収束の目途が不透明な状態が続いていることから、資金繰り確保に苦慮する企業がさらに出てくることも想定される。

 このような状況下において、財務の抜本的改善を目指す私的整理手続や法的整理手続(民事再生・会社更生)を検討する企業が今後増加する事態も想定される。このうち法的整理手続は、手続が公表されるため風評被害等による事業価値毀損のリスクが高い反面、双方未履行双務契約に係る不採算な契約関係(賃料が過大な店舗賃貸借等)の一方的解除も可能となるため、財務体質のみならず、新型コロナにより悪化した収益体制(PL)の改善にも資するというメリットもある。

 本稿では、一歩進んだ再建手法としての私的整理・法的整理手続の概要を説明するとともに、売り手・買い手双方の立場から当該手続にかかるM&Aのポイントを解説する。


2. 一歩進んだ事業再建手法としての私的整理と法的整理

(1) 近時の傾向

 Withコロナにおける事業環境の激変を踏まえたリストラクチャリングが思うように進まず資金繰りが苦しくなった企業への処方箋として、金融機関からの借入のリストラクチャリング(リスケジュール(注1)・債権放棄等)を含む抜本的な財務再建が考えられる。このような一歩進んだ事業再建策の手法としては、「債務者と債権者の合意のもとで行われる私的整理」と「裁判所の下で抜本再生を行う民事再生・会社更生といった法的整理」の二つが存在する。

 現在の日本の実務では、

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