[Webマール]

(2025/05/27)

中小M&Aの実施後に行うべき経営課題の洗い出しと解決に向けた処方箋

土屋 繼(黒鳥社 代表取締役CEO、日本サイン 社長執行役員、KT Partners 代表取締役)
  • A,B,C,EXコース
はじめに

 M&A市場が空前の活況を呈している。日本経済全体の縮小傾向、テクノロジーの進化を中心とした経営競争環境の変化、若年層雇用の難しさなどの背景から、自力による有機的な成長を志向するだけでなく、他社の力を利用した非連続な成長を志向しようとしている結果なのであろう。こうした動きは、従前の比較的規模が大きい企業を対象としたものから中小企業を対象としたものに拡大しつつある。特に地方における中小企業の後継者不在の問題は根強く、第三者による中小企業の買収は増加の一途をたどっている。

 しかし、中小企業を対象とした企業買収は、そもそもの規模の小ささ、業界業種の多様さ、地域の分散度合いなどの理由により、その実態の多くは把握されていない。とりわけ第三者による中小企業の事業承継は学術レベルであまり研究されておらず、実務レベルにおいても総体的に語られることは少ないのが現状である。

 そこで、本稿では、筆者が約20年にわたり複数の会社を経営してきた経験と、10年以上にわたり経営管理学修士課程(MBAコース)の教員を務めてきた経験をベースに、第三者による中小企業の事業承継が実行された直後に行うべき経営アクションの要点を紹介する。本稿は、経営実務家の観点から語られがちな「“俺”の経営哲学」的なストリートベースでもなければ、経営学者や一部の評論家が語る「“理論”としての経営学」のようなブックベースでもなく、両者を合わせたハイブリッド型の視点で経営セオリーのエッセンスをまとめたものである。

 ただ、経験はあくまでも筆者個人のものにすぎず、その汎用性には限界がある。そもそも企業経営それ自体が、外部にも内部にも多数の影響要因があり、相互に複雑に関連しているため、再現性の担保は困難と言わざるを得ない。したがって、筆者が提示する事柄には常に例外があることを読者の皆様にはあらかじめご理解いただきたい。



■筆者プロフィール■

土屋 繼(つちや・けい)

土屋 繼(つちや・けい)
1971年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了(MBA)。コンサルティングファーム A.T.カーニーを経て、1999年よりITベンチャー業界へ。さまざまなベンチャー企業に関わり2度のIPOを経験。東証プライム上場サイボウズ子会社代表を経て、2011年より中堅総合内装会社の代表取締役に就任。2014 年に博報堂の傘下に入り、2016 年に退任。その後、経営大学院にて社会人教育に携わりつつ、黒鳥社を起業。同時に、PEファンド傘下の創業50年となる日本サインの企業再生にも経営者として従事。2024年には企業・事業再生をITからも支援するコンサルティング会社KT Partnersも起業。現在、3社の経営に当たりつつ、複数社の社外役員を務め、大学院・大学の教壇にも立っている。

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