政府は5月14日、新しい資本主義実現会議(議長・石破茂首相)を開催し、「
中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5カ年計画」の施策案を示した。
同案では、中小企業・小規模事業者の賃上げを早期に実現・定着させるため、今後5年間に集中的に取り組む政府対応として、価格転嫁・取引適正化、生産性向上、人材の育成と処遇改善のほか、M&Aに関しては「事業承継・M&A等の中小企業・小規模事業者の経営基盤の強化」に取り組むとしている。
具体的には、「事業承継・M&Aに関する新たな施策パッケージ」を策定し、①M&Aの売手側の経営者に対する施策の強化、②経営者から信頼される官民のM&A 支援機能の強化、③経営能力に優れたM&Aの買い手へのマッチング等の支援を進める。
「M&Aの売手側の経営者に対する施策の強化」では、従業員の雇用維持や譲渡企業の借入金に対する経営者保証の解除といった買い手との同意事項がM&A後に守られない場合、買い戻しや解除を可能とするスキームの検討・普及を図る。
また、廃業費用を出せないために、事業を畳むことを決断できない中小企業・小規模事業者のニーズに対応し、事業承継・M&A補助金を活用して廃業・再チャレンジの支援を強化する。
このほか、譲渡価格の相場観の醸成のために、M&A支援機関登録制度を通じてM&Aの取引データを集計し、個者を特定できない形で公開するほか、税理士・弁護士等の専門家が事業承継・M&Aで悩む経営者を事業承継・引継ぎ支援センターへ紹介することに対するインセンティブを検討する。
「経営者から信頼される官民のM&A支援機能の強化」では、M&Aアドバイザーの質・倫理観向上のために、新たな資格制度を検討し、支援人材の育成を図る。また、事業承継・引継ぎ支援センターの支援体制の強化や同センターによる都道府県のエリアを超えたM&Aのマッチングを促進する。
「経営能力に優れたM&Aの買い手へのマッチング等の支援」では、後継者となる個人がM&Aを行う場合の買収資金を供給する
サーチファンドや小型案件を扱う事業承継ファンドに対する資金供給を後押しするほか、事業承継・引継ぎ支援センターや地域金融機関を通じてM&A後の事業統合作業である
PMIの重要性を周知し、計画的なPMIの推進を図る。
これらの施策は、6月に改訂される「新しい資本主義実行計画」に盛り込まれる。
■内閣官房「新しい資本主義実現会議(第34回)」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai34/gijisidai.html