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[【事業再生】事業再生案件のM&A実務~PEファンドによる事業再生プロセス(ニューホライズンキャピタル)]

(2020/08/06)

【第4回】100日で再生企業に魂を吹き込め

長瀬 裕介(ニューホライズンキャピタル マネージングディレクター)
「当社は『ニューホライズンキャピタル』という投資ファンドの支援を受けて新会社となりました。これから新会社は事業再生の道を歩んでいきます。これまでのような個人経営『創業家の会社』ではなく、『我々社員の会社になったんだ』という事です。
  • 社員一人一人が、新会社の救世主になってほしい。
  • 厳しい現実の再認識と同時に、必ず黒字化が可能である事を信じてほしい。
  • 数年に亘る改革断行により、成長戦略のシナリオ作りとその実行を決意してほしい。
これが私からの最初のお願いです。」

 これは、投資実行直後に、ファンドが派遣した新社長が実際に行った全社員向けの挨拶である。

 前回まで、事業再生計画の策定(スキームや手続)とその決定プロセスについて説明をしてきた。今回からは、策定した事業計画をいかに実行してくかを解説する。まず今回は投資直後のいわゆる『100日プラン』について、筆者の経験もふまえて解説したい。

1. DAY1の重要性

 通常、ファンドが関与する事業再生案件は、

「○○株式会社、私的(法的)整理で投資ファンドの下で事業再生へ。負債総額○○億円。」

 というような、マイナスイメージを煽る新聞記事になる事が多い。これをみた従業員(及びその家族)は当然に不安になる。そこで、従業員らの不安を取り除くためにも、公表された当日に新社長から全社員に向けて、前向きで力強いメッセージを発信し「必ず事業再生が可能である」ことをトップ自らが熱く語る。

 一方、同時にファンドのメンバーによる経営幹部向けの説明会も行う。ここでは全社員向け説明会とはうって変わって、厳しい現実を「冷静に」「数字的に」ファンドメンバーが説明する。

 さらに、DAY1の夜は経営幹部全員、新社長、ファンドメンバー、による会食を行うことが多い。全員で本音を話し合い、全員のベクトルを揃えるための重要な場面だ。意外かもしれないが、事業再生の重要な局面では、こういった会議室の外での会話がポイントになる事が稀ではない(筆者はこのDAY1の幹部メンバーとの会食を「桃園の誓い」と思っている)。

 こうして、Day1が終わり、100日プランがスタートしていく。

2. 100日プランがスタート

 では、100日プランとはどのようなものか。これには実は2つの意味がある。

① 投資後100日間で実施するアクションプラン
② 投資後、対象会社に入り込み100日間かけて策定する中期経営計画

 もちろん、投資前のデューデリジェンスで、対象会社の課題・改善点についてある程度の目途はつけている。しかし、会社に実際に入り込むことで見えてくる新たな課題を、投資前に作成したプロジェクションに織り込みながら修正を加え中期経営計画へ落とし込む。そうして作成された中期経営計画は約100日後の取締役会で決議され、新会社として初めての中期経営計画が完成する。これがこの先3~5年間の道筋になるのだ。

 100日プラン(上記でいう①)の中で何を実施するかは、案件(規模、業種、投資テーマ)によって異なるが、再生案件では(ア)経営数字の見える化プロジェクトと(イ)クロスファンクショナルチーム(Cross Functional Team:CFT)活動、は最低限実施する。これを行うことで企業の病巣が見えてくる。

(ア)経営数字の見える化プロジェクト

 経営不振に陥る企業は、例外なく数値管理が弱い。経営判断に資する数値情報が揃っていないから、正しい意思決定ができず、結果、経営不振に陥る。この点、会計士やコンサルに依頼するという方法もあるが、再生企業にはコンサルを使いこなすノウハウもなく、コンサルの指導を吸収して社内実務に落とし込む人材もいない。そこでファンドメンバーが社内に入り込み、必要に応じてコンサルを使いながら見える化プロジェクトを指揮し、経営判断に資する数値情報を整理する。

 具体的には、①管理会計の導入・精緻化(製品別原価計算制度の導入、部門別損益の把握、プロジェクトごとの案件管理シートの作成、間接費配賦の精緻化など)や②財務会計の見直し(月次決算の早期化、レポーティングフォームの統一)等である。

 経営数字を正確に、かつタイムリーに把握する事は事業再生の最初の一歩である。

(イ)埋もれたノウハウを引き出すCFT活動

 経営不振に陥る企業は、コミュニケーションが不足し、情報やノウハウが共有されておらず本来の企業価値が発揮できていない。特に、創業からの伝統が長いオーナー系企業では、培ってきたノウハウや人脈がすべて属人的であり、組織的に標準化がされていない場合がある。また、営業と生産、生産と購買など部門間コミュニケーションの欠如が売れない商品の在庫増に繋がっている場合も多い。...

■筆者履歴
長瀬 裕介(ながせ・ゆうすけ)
あずさ監査法人に7年間勤務。製造業、商社、情報通信業の企業を中心とする監査、IPO支援業務等に従事。成長過程にある企業の経理全般、管理会計の整備等を経験。 2013年にニューホライズンキャピタルに入社し、投資実行、投資後のハンズオン支援からEXITに至る一連の業務を担当。特に再生案件における金融調整、リストラクチャリングから投資実行後の経営企画・管理部門の強化を担当。丸茂工業案件では取締役として投資直後の原価計算制度の構築からEXITまで一貫して関与し、CFOを補佐・監督した。その他、万葉軒の監査役、たち吉の取締役を歴任。横浜国立大学経済学部卒。

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