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[企業変革手段としてのM&Aの新潮流]

2021年8月号 322号

(2021/07/15)

第3回 事業ポートフォリオの新陳代謝に取り組む ~既存事業の転換と再構築~

中村 司(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 マネジャー)
田口 優(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 マネジャー)
白鳥 聡(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー 執行役員)
事業には賞味期限がある。既存事業の転換や再構築を通じた、事業ドメイン変革の必要性

 新型コロナウイルスの感染拡大に端を発し、産業・企業を取り巻く経営環境・事業環境に不可逆的な変化が顕在化しつつあるが、そのような環境下で、保有事業の市場性や競争力に大幅な変化が生じてしまった産業・企業も少なくない。我々は単なる感染症やその予防への対応が求められるだけでなく、それに伴った顧客行動の変化やデジタル化の推進といった、過去数十年掛かっても起こり得なかった変化が「早送り」のように、この1-2年で起こりつつある状況を目前にしている。

 そのような急速な事業環境の変化の下で多大な影響を受けつつある企業が、今後、V字回復や再成長を目指していくためには、事業ドメインのシフトの一環として、弱体化してしまった・今後も見込みの持てない事業領域からリソースを解放し、より市場性の高い・勝てる見込みのある事業領域に投資を注力することが不可欠である。これ自体は、自社の「事業ポートフォリオの新陳代謝」を図っていくことに他ならず、恒常的に実施されるべきものであるが、特に昨今のような急激な環境変化の下においては重要度が高まっている。

 リソースを解放すべき事業領域、および投資をすべき事業領域の見極めにあたっては、状況に応じて様々な検討軸が用いられるが(詳細は先月号を参照)、大別すると以下の3つの観点に収束する。

A. 当該事業領域の市場魅力度(市場自体の規模や成長性等)
B. 当該事業領域における自社の競争力(市場における自社の強みや優位性等)
C. 自社の全社戦略やAspirationとの適合度(将来自社が目指す中核領域とのシナジーや繋がり等)

 これらの観点から、自社事業のポートフォリオを「①ノンコア領域」「②既存コア領域」「③将来コア領域」の3領域に区分したうえで、「①ノンコア領域(不採算領域を含む)」に係る各種リソースの解放を推進し、また解放したリソースや「②既存コア領域」で創出した再投資原資を基に、「②既存コア領域」において事業リモデリングによる競争力向上やコスト改革を行い、かつ「③将来コア領域」において、今後自社の柱となりうる事業の「種」や「芽」への投資を行うことが、事業ポートフォリオ転換の基本的な方針となる。

 本記事においては、特に自社の中核事業の「事業転換・再構築」に主眼を置いて、改革手法を事例とともにご紹介する。

<図表1:事業ポートフォリオにおけるドメインシフトの考え方>


「平時」の改革と、「有事」の改革。タイミングに応じた改革手法の使い分け

 企業の「事業転換・再構築」の取り組みは、一般的には以下に述べる4つの手法の組み合わせにより実現していくが、どの施策に重点的に取り組むかについては、当該企業が置かれた事業環境や当該企業の財務状況、すなわちその企業に「残された時間」に依存する。

 まずは、4つの施策を順番に見ていくが、一部の施策については、詳細を次月号に譲ることとする。

1. 「ノンコア領域における事業の整理」
「A.当該事業領域全体の魅力度が低い」かつ「B.当該事業領域での自社の競争力・優位性が低い(下がりつつある)」領域は「ノンコア領域(=撤退すべき領域)」と定め、当該事業については、一刻も早い攻めの撤退を狙う。高値売却を視野に入れつつ、「買い手候補と一定の条件が合意できれば売却」「それが叶わなければ清算」等といった「撤退シナリオ」を作り、それぞれの経済合理性・リスクを比較し決定する。(詳細は次月号を参照)
  
2. 「既存コア領域の収益構造改革、およびビジネスモデル変革」
既存事業のうち、「市場自体の魅力度も高く、かつ自社が競争力を持ちうる領域」では、引き続き成長投資を継続する事になる。しかし一方で「市場自体の魅力度が下がりつつあるが、未だ自社が競争力を持ちうる領域」や「市場自体の魅力度は一定あるが、自社としての競争力が下がってきている領域」については、既存の成長エンジンの「梃入れ」のための事業再構築を行う。具体的には、競争力の「賞味期限」の延長(ないしは、最小投資での残存者利益獲得)のために、収益構造改革(コスト最適化)や、ビジネスモデルの再構築(事業リモデリング)を実施していく。
  
3. 「将来コア領域への投資・育成」
「A.当該事業領域全体の魅力度が高く」、一定「B.当該事業領域で自社が競争力を持ちうる」領域で、かつ「C.自社としての全社戦略・Aspirationとの適合度が高い」事業領域については、自社の「将来コア領域(=新たな成長エンジン)」と定め、自社としての当該事業領域の「青写真」を定めつつ、その「青写真」の実現に向けて、複数の事業の「種」や「芽」の育成を行う(又は適切なトライアルののちに見切りをつける)仕組みを備えることで、事業育成を加速していく(詳細は次月号を参照)。
  
4.「上記1~3を実現するための、構造改革費用や投資費用の捻出」
特に、「1. ノンコア領域における事業の整理」や「2. 既存コア領域の収益構造改革、およびビジネスモデル変革」の実行にあたっては、一時的に一定規模の構造改革コストの発生が避けられないため、それに備え構造改革原資の確保が必要となる。
具体的には、「1. ノンコア事業の整理」では会社の清算や廉価売却に伴う減損、不要となった事業用固定資産の除却に伴う減損が発生しうるし、2では構造改革に伴う人材のリストラクチャリング費用や、新たな競争力の獲得のための投資などが一時的に発生しうる。

 これらの施策の計画・実行にあたっては、

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