レコフデータは1985年以降のM&Aデータベースを構築しています

キーワード 一覧

[視点]

2017年2月特大号 268号

(2017/01/19)

株主利益最大化原則の適用範囲

 落合 誠一(東京大学 名誉教授)

1. 原則の意義

  株式会社法の基本原則の一つに株主利益最大化原則がある。このことは、米国のみならず、わが国においても、通説的な見解であると言ってよいであろう。もっとも私が、1998年に『岩波講座 現代の法7』に「企業法の目的―株主利益最大化原則の検討―」との論稿を発表した当時とは、隔世の感がある。当時は、日本の株式会社は、株主のためではなく、従業員のために経営がなされるとの考え方(従業員主権論)が支配的であったからである。しかし今日では、例えば、江頭憲治郎教授の『株式会社法(第6版)』22頁(2015年、有斐閣)や田中亘教授の『会社法』255頁(2016年、東大出版会)等を見ても、従業員主権の立場は大きく後退し、それに代わって、株主利益最大化原則(株主主権論)を支持する立場が支配的となっているのである。
  この原則が通説的立場となったのは、株主が会社の剰余権者の地位にあることに着目しての理論的正当化が、論理的にも実践的にも説得的だからである(この原則の詳しい説明は、落合誠一『会社法要説(第2版)』49頁(2016年、有斐閣)参照)。現代経済社会において株式会社の社会的な存在意義は、何と言ってもわれわれの社会に新しい富をもたらすことである。そのことを効果的に実現するためには、会社のさまざまなステークホルダー(株主、債権者、従業員、経営者等)の中から、一体誰に会社の経営を委ねるべきかが問題となる。そしてこの問題に対する正解は、剰余権者である株主に任せるのが良い。なぜならば、会社が新たに生み出した利益は、まず債権者等のステークホルダーに弁済され、株主は、そのうえでもし剰余があれば、その剰余部分のみが取り分となるからである(株主の剰余権者としての特有な地位)。株主はその剰余を生み出すことにインセンティブがあり、したがって、株主に会社の経営を任せることが、会社の利益を最大化させるからである。

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、Cコース会員、EXコース会員限定です

*Cコース会員の方は、最新号から過去3号分の記事をご覧いただけます

マールオンライン会員の方はログインして下さい。その他の方は会員登録して下さい。

[無料・有料会員を選択]

会員登録

バックナンバー

おすすめ記事

コロナ禍でアニマルスピリットを発揮するニトリホールディングス

速報・トピックス

[M&Aスクランブル]

NEW コロナ禍でアニマルスピリットを発揮するニトリホールディングス

マール企業価値研究グループ

非友好的な買収提案と取締役会の対応の在り方

視点・寄稿

[視点]

NEW 非友好的な買収提案と取締役会の対応の在り方

大杉 謙一(中央大学法科大学院 教授)

【第4回】 ファンドからの買収案件と表明保証保険 – 保険会社への責任転嫁に売主のモラルハザードはあるか?

スキルアップ

[【法務】Withコロナ時代のクロスボーダーM&Aの実務と新潮流(東京国際法律事務所)]

NEW 【第4回】 ファンドからの買収案件と表明保証保険 – 保険会社への責任転嫁に売主のモラルハザードはあるか?

森 幹晴(東京国際法律事務所 代表パートナー 弁護士・NY州弁護士)

M&A専門誌 マール最新号

アクセスランキング

M&A専門誌マール

M&A専門誌マール

「MARR(マール)」は、日本で唯一のM&A専門誌で、「記事編」と「統計とデータ編」で構成されています。

レコフM&Aデータベース

レコフM&Aデータベース

「レコフM&Aデータベース」は、日本企業のM&Aなどどこよりも網羅的に、即日性をもって構築している日本で最も信頼性の高いデータベースです。

セミナー

セミナー

マールの誌面にご登場いただいた実務家、研究者などM&Aの専門家を講師としてお招きし、成功に導くポイント、M&Aの全体プロセスと意思決定手続き、実証研究から見た分析などについてご講演いただきます。

SPEEDA RECOF

SPEEDA RECOF

「SPEEDA RECOF」とは「レコフM&Aデータベース」と株式会社ユーザベースが開発・運営する企業・業界情報プラットフォームである「SPEEDA」がシステム連携します。

NIKKEI TELECOM日経テレコン 日経バリューサーチ

日経テレコン

2002年7月に、日本経済新聞デジタルメディアが運営する日経テレコンの「レコフM&A情報」を通じてM&Aデータの提供を開始しました。

M&Aに関するお問い合わせ、ご相談は
こちらからお気軽にお問い合わせ下さい。

お問い合わせフォーム