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[M&A戦略と会計・税務・財務]

2020年11月号 313号

(2020/10/15)

第159回 公開買付けにおける実務上の留意点

黒沢 潤(PwCアドバイザリー合同会社 マネージャー)
はじめに

 日本における公開買付けは、TOB(Take Over Bid(注1))と呼ばれ、最近では大型の案件、経営権を巡って経営陣と対立をする敵対的買収案件やアクティビストと呼ばれるヘッジファンドなどが関与する案件など、話題性の高い案件も多く、新聞やテレビなどのメディアでもTOBという言葉を聞くことが珍しくなくなった。

 実際の公開買付け案件の件数は、過去10年では1年で約40件から50件程度で推移をしており、案件数自体では特段増加している状況ではない(注2)。しかしながら、公開買付け案件は、ターゲット企業(対象会社・株式発行体)の経営陣の賛同が得られないままに公開買付けが強行されるケース、公開買付けに対抗者が現れ買収合戦に発展するケース、ヘッジファンドなどの大株主から公開買付価格に対するネガティブな表明や公開買付け手続きの公正性を問うプレスが出されるケースなど、案件自体の性質の変化やその複雑性は増してきていると感じている。また同時に、公開買付規制などの法制度も実務や海外の公開買付制度等を参考にしながら法改正され、進化してきている。

 本稿では、簡略的に日本の公開買付制度・規制を概観したうえで、日本の公開買付けにおける留意点や論点について、特に実務においてポイントとなる点に焦点を当て、コンパクトに説明をしていく。なお、実際に公開買付けを検討する場合には、フィナンシャル・アドバイザーなどのM&Aの専門家や弁護士等へ相談のうえで進めて頂ければと思う。


公開買付規制・制度

‐公開買付規制の目的 

 まずもって、公開買付けとは、金融商品取引法(以下、「金商法」という。)27条の2第6項にて「不特定かつ多数の者に対し、公告により株券等の買付け等の申込み又は売付け等の申込みの勧誘を行い、取引所金融商品市場外で株券等の買付け等を行うこと」と規定されているように、文字通り、ターゲット企業(対象会社・株式発行体)の経営権の掌握・取得等を目的として、当該企業の株券等(注3)を市場外にて一定の期間内に均一の条件(一定の価格)での買付けを不特定且つ多数に向けて公告をすることで取得をしていくという手法である。

 日本における公開買付規制・制度は、金商法(旧:証券取引法)にて規定がされている。公開買付けを実施する場合、金商法の定める一定の条件及び手続きの遵守が求められる。金商法1条にて「有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もつて国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする」と規定されている通り、公開買付制度の目的は投資家の保護と証券取引の秩序の維持を目的としている。

‐公開買付規制の対象となる取引‐

 公開買付規制の適用範囲について規定をしているのが、金商法27条の2第1項であり(柱書但書にて適用除外について規定をしている)、金商法27条の2第1項1号から金商法27条の2第1項6号にて各適用要件が具体的に規定されている。ここでは、公開買付けが強制される取引について規定がされており、具体的には、買付けの主体、一定の条件を満たす発行者による株券等か否か、買付け等への該当性、対象取引への該当性、適用除外事由への該当性という観点から、公開買付けが強制される取引かどうかを判断していくこととなる。なかでも、「一定の条件を満たす発行者による株券等か否か」及び「対象取引への該当性」については、公開買付けが強制される取引かどうかを判断する際の中核的な判断軸・基準である。しかし、やや実務上では、誤解・ミスリードされている部分もある。

 具体的な例を挙げていこう。例えば、

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【出席者】(五十音順)
秋山 健太(ラザードフレール 代表取締役社長兼COO)
安藤 元太(経済産業省 産業組織課長)
吉村 典久(大阪市立大学大学院経営学研究科 教授)
武井 一浩(西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士)(司会)

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