[M&A戦略と会計・税務・財務]

2015年9月号 251号

(2015/08/17)

第99回 米国パートナーシップへの投資に係る最高裁判決について

 荒井 優美子(PwC税理士法人 ディレクター)
  • A,B,EXコース

1.はじめに

  信託契約を介した米国デラウェア州のリミテッドパートナーシップ(LPS)による米国不動産投資事業について、当該LPSの租税法上の法人該当性が争われた事案(以下「本件LPS事案」)で、平成27年7月17日、最高裁判所は下級審(名古屋高等裁判所)の判断を覆して、所得税法上の外国法人に該当すると判示した。当該最高裁判決は、東京、名古屋、大阪での訴訟案件のうち名古屋の事案について出されたものであるが、東京と大阪の最高裁判決も同様の判示が出されるものと思われる。本件LPS事案は、東京、大阪、名古屋の裁判所で判断が分かれたため、最高裁の判断が注目されていたものである。民法組合等による不動産投資事業の損失については、平成17年度の税制改正により、個人の所得計算上は当該損失は無かったものとみなす措置が講じられている(注1)が(従って不動産損失として他の所得との通算が認められない)、本件LPS事案は平成17年度税制改正前の所得に係る申告であり、不動産所得として損益通算が認められるか否かの争点として、LPSの租税法上の法人該当性が争われたのである。

  外国の事業体については、これまでも米国LLCに係る取扱いが国税庁から公表され、ケイマンLPSからの利益の所得区分(配当か否か)の該当性(最高裁平成20年3月27日の判決において、組合と判断した)が示された経緯はあるが、米国LPSの法人該当性判断は今般の最高裁判決が最初の判示である。米国LPSへの投資は個人による節税スキームのみならず、日本企業が米国投資としてLPS持分を保有している場合があり、LPSが法人か否かにより、投資利益の取扱いも異なってくる。今般の最高裁判決は、そのような法人投資にも影響するものと思われる。

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