[Webインタビュー]

(2017/07/12)

【第85回】グローバルCEO承継調査から見えてくる日本企業の特徴

 三井 健次(PwCコンサルティング 常務執行役員、Strategy& リーダー)
 唐木 明子(PwCコンサルティング Strategy& パートナー)
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M&A件数とCEO交代率

―― PwCネットワークのStrategy&は、世界の上場企業における時価総額の上位2500社を対象にCEOの承継についての第17回となる2016年の年次調査をまとめました。この調査結果のポイントについてうかがっていきたいと思いますが、まず、この調査の概要について説明していただけますか。

三井 「この調査は、16年1月1日時点の時価総額ベースで、世界の上場企業上位2500社(ブルームバーグに基づく)を抽出して調査対象としています。主に各企業からの情報(交代の理由を除く)を基に、16年にCEOの交代があった企業を特定し、退任するCEOおよび新CEO、ならびに暫定CEOについて、その肩書、任期、性別、会長職、国籍、職務経験などに関する詳細情報を入手してまとめています。なお、個々のCEO交代の理由についてはStrategy&が個別に検証を行いました」

―― 調査結果で、大きな特徴としてどのような点が上げられますか。

三井 「まず、CEOの交代率が、史上最高だった15年の16.6%から16年には14.9%に減少したという点が上げられます。この背景には、主にM&Aの件数減少があると思われます。ちなみに日本の交代率15.5%はブラジル・ロシア・インドの17.2%に次ぐ高さでした。




 基本的にCEO交代のトリガーとなるような大きなイベントとしては業績の変化と、それとも関係しますが、業界再編に伴うM&Aも背景にはあると思います。その意味では16年のCEO交代率が減少しているという結果は、15年に比べるとM&Aの動きが少し落ち着いているということがいえると思います。

 日本企業のCEO交代率15.5%のうち、通常交代、つまり解任でもなくM&Aでもないケースが11.1%。解任が3.5%、合併、M&Aなどに伴う交代が0.9%となっています。西欧のCEO交代率は15.3%と、日本に似た数字になっていますが、通常交代8.7%、解任3.7%、合併による交代が2.9%とM&Aによる交代が日本より高くなっています。米国、カナダでも合併にともなう交代が3.5%となっていまして、西欧と同様、結構大きなインパクトになっています」

唐木 「日本の場合は企業業績にあまり影響されずに、粛々と任期満了でトップが交代をしていくという傾向がこれまでもありましたが、その点は今でも変わりないということもできますね」

日本企業のCEO交代の顕著な傾向

―― 日本企業に関する特徴としては他にどのような点が挙げられますか。

三井 「日本企業については、いくつかの顕著な傾向が見られました。1つは、16年の新任CEOの平均年齢が61歳で、15年の調査より1歳上がり、世界平均の53歳と比べて8歳も高くなっていることです。第2に、日本人以外のCEO就任は世界平均13%に対して日本企業は0%。第3に、自社以外の業務経験という点で見ましても、他企業から招聘されたCEOが世界平均は18%であるのに対して日本の場合は3%。他企業でCEOを経験した人は世界平均21%に対して日本は9%。また、他企業で業務経験持つCEOは世界平均74%に対して日本は33%。第4に、MBA保有率についても世界平均36%に対して日本企業の場合は4%となっていまして、今挙げた数値はすべて世界で最も低いという結果になっています。さらに、新任女性CEOについても世界平均3.6%に対して日本は0%です」




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