[M&Aスクランブル]
(2017/08/31)
2017年7月3日に公表された出光興産による公募増資は市場関係者を驚かせた。それまで同社の経営陣は昭和シェル石油との合併を巡って創業家と対立、膠着状態からの脱却を狙った強硬策と捉えられたからだ。これまで出光興産の創業家の持ち株比率は33.92%で合併など経営にかかわる重要議案を否決できる3分の1超を握っていたが、今回の増資で同比率は26%程度に低下するとみられ、経営陣は経営統合などの事業再編を進めやすくなるとみられる。7月20日には増資が完了し、15年6月に表明して以来、延期されていた昭和シェル石油との合併に向けた協議がようやく本格化することになる。報道などによると、今後のスケジュールは、①創業家との話し合い、②昭和シェル石油との事業提携の効果を実現化、③合併決議の臨時株主総会を開催後・合併実現、といった流れになる。
これが実現に向かえば今回の増資決断は、経営陣自らの退路を断った判断として後々評価されることになりそうだ。そもそも石油元売り業界は国内のガソリン需要の低迷などの逆風を受けており、経済産業省によれば2015年度に53,127(千KL)であったガソリン需要実績は、2021年度には47,051(千KL)に減少する見込みだ。低燃費車の一層の普及やいわゆる自動車離れなどが背景と思われる。また、同業界は企業業績が原油市場の動向を受けやすく、原油価格が低迷した2014年度~2015年度、大手石油会社は軒並み経常赤字となった。このような状況の下、経営統合によるコスト削減や新規事業進出による収入源の多様化が課題となっていた。
実際、同業界では再編が続き・・・
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